2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、切除不能肝細胞がん患者に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE:Transcatheter Arterial Chemoembolization)+ソラフェニブ(商品名ネクサバール;以下ネクサバール)併用療法の有効性を検証した第II相のTACTICS試験(NCT01217034)の結果が近畿大学医学部消化器内科・主任教授・工藤正俊氏らにより公表された。
TACTICS試験とは、切除不能肝細胞がん患者(N=156人)に対して肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法を投与する群(N=80人)、または肝動脈化学塞栓療法のみを投与する群(N=76人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同オープンラベルの第II相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法25.2ヶ月に対して肝動脈化学塞栓療法13.5ヶ月、肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが41%(ハザード比:0.59.95%信頼区間:0.41-0.87,p = 0.006)統計学的有意に減少を示した。
また、副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は未到達であり、無増悪期間(TTP)中央値は肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法24.1ヶ月に対して肝動脈化学塞栓療法13.5ヶ月であった(ハザード比:0.56.95%信頼区間:0.38-0.83,p = 0.004)。その他評価項目としてTACE治療不能までの期間(TTUP)中央値は肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法26.7ヶ月に対して肝動脈化学塞栓療法20.6ヶ月であった(ハザード比:0.57.95%信頼区間:0.35-0.92,p = 0.02)。
一方の安全性としては、肝動脈化学塞栓療法、ネクサバールの既存の安全性プロファイルと一致しており、本試験で新たに確認され有害事象(AE)はなかった。
以上のTACTICS試験の結果より、工藤正俊氏らは以下のように述べている。”切除不能肝細胞がん患者に対する肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法は肝動脈化学塞栓療法よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが証明されました。また、安全性においても特に問題になるような有害事象(AE)も確認されず、肝動脈化学塞栓療法+ネクサバール併用療法は忍容性の高い治療方法であることが本試験の結果より示されました。”