2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、2レジメン以上の前治療歴のある進行性胃がんまたは食道胃接合部腺がんアジア人患者に対するペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性を検証した第II相のKEYNOTE-059試験(NCT02335411)の結果が愛知県がんセンター中央病院・薬物療法部部長・室圭氏らにより公表された。
KEYNOTE-059試験とは、2レジメン以上の前治療歴のある進行性胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対してキイトルーダ単剤療法(コーホート1)、未治療の進行性胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対してキイトルーダ単剤療法(コーホート2)、またはキイトルーダ+シスプラチン+5-FUまたはカペシタビン併用療法(商品名ゼローダ)(コーホート3)を投与し、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)などを検証したオープンラベルの第II相試験である。なお、今回のポスターセッションでは、コーホート1のアジア人患者を対象とした結果が公表されている。
本試験のコーホート1に登録された患者は259人、その背景としてはPD-L1発現率陽性患者は57%。なお、CPS(Combined Positive Score)1%以上をPD-L1発現率陽性定義している。174人の患者でマイクロサテライト不安定性(MSI)状態が測定され、7人の患者がマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)であった。
上記の背景を有する進行性胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対してキイトルーダ単剤療法を投与した結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)12% (95%信頼区間:8-17) を示し、奏効持続期間(DOR)中央値14.0ヶ月(2-19)であった。その他評価項目は、6ヶ月無増悪生存率(PFS)15%、6ヶ月生存率(OS)46%を示した。また、今回の発表ではPD-L1発現率陽性、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)、アジア人など患者背景別の結果が示されており、下記の通りである。
PD-L1発現率陽性の患者におけるキイトルーダ単剤療法の結果は、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)16% (95%信頼区間:11-23) を示し、奏効持続期間(DOR)中央値14.0ヶ月(3-19)であった。その他評価項目は、6ヶ月無増悪生存率(PFS)20%、6ヶ月生存率(OS)50%を示した。
マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)患者におけるキイトルーダ単剤療法の結果は、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)57% (95%信頼区間:18-90) を示し、奏効持続期間(DOR)中央値は未到達((5-14)であった。その他評価項目は、6ヶ月無増悪生存率(PFS)20%、6ヶ月生存率(OS)50%を示した。
また、本試験に登録されたアジア人患者は41人おり、その内PD-L1発現率陽性を示したアジア人患者は42%であった。PD-L1発現率陽性のアジア患者におけるキイトルーダ単剤療法の結果は、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)12% (95%信頼区間:2-36) を示した。なお、PD-L1発現率陽性を示した非アジア人では客観的奏効率(ORR)17% (95%信頼区間:11-24) を示した。
さらに、本試験に登録されたマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)アジア人患者は1人おり、キイトルーダ単剤療法により完全奏効(CR)を達成した。
一方の安全性としては、グレード3または4の有害事象(AE)はアジア人患者の17%、非アジア人患者の18%で確認されており、この結果は全コーホートにおける結果と類似していた。
以上のKEYNOTE-059試験の結果より、室圭氏らは以下のような結論を述べている。”2レジメン以上の前治療歴のある進行性胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対するキイトルーダ単剤療法は持続的な奏効を示しました。特に、PD-L1発現率陽性、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)患者に対してその効果は顕著でした。また、安全性においてもアジア人、非アジア人の間で差異はない結果が得られたことより、進行性胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者に対する標準治療としてキイトルーダ単剤療法の有用性が本試験より示唆されました。”