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トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-L1抗体薬デュルバルマブ+化学療法、病理学的完全奏効率(pCR)53.4%を示す

この記事の3つのポイント
・GeparNuevo試験とは、トリプルネガティブ乳がん患者に対して術前化学療法としてデュルバルマブ+化学療法とプラセボ+化学療法の有効性を比較検証した第II相試験である
・本試験の結果、主要評価項目である病理学的完全奏効率pCR)はデュルバルマブ群53.4%に対してプラセボ群44.2%(P=0.287)、デュルバルマブ群の方が病理学的完全奏効率(pCR)は高率であった
・本試験のサブグループ解析の結果、プラセボ群よりもデュルバルマブ群で病理学的完全奏効率(pCR)が統計学的有意に高率であった患者群は化学療法前の患者群、病期ステージIIa以上の患者群、40歳未満の患者群であった

2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としての標準化学療法+抗PD-L1抗体薬であるデュルバルマブ併用療法の有効性をプラセボと比較検証した第II相のGeparNuevo試験(NCT02685059)の結果がGerman Breast Group・Sibylle Loibl氏らにより公表された。

GeparNuevo試験とは、トリプルネガティブ乳がん患者(N=174人)に対して術前化学療法としてデュルバルマブ単剤療法を2週間投与後にデュルバルマブ+ナブパクリタキセル併用療法を12週間投与後にデュルバルマブ+EC療法(エピルビシン+シクロホスファミド)併用療法を8週間投与する群(N=88人)、または術前化学療法としてプラセボ単剤療法を2週間投与後にプラセボ+ナブパクリタキセル併用療法を12週間投与後にプラセボ+EC療法(エピルビシン+シクロホスファミド)併用療法を8週間投与する群(N=86人)に無作為に振り分け、主要評価項目として病理学的完全奏効率(pCR)を比較検証した第II相試験である。

本試験に2016年6月より2017年9月までに登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値49.5歳(23.0-76.0歳)。TNM分類におけるT因子の割合はcT1が44.5%、cT2が49.7%、cT3が3.5%、cT4が2.3%。腫瘍浸潤リンパ球(TILs)ステータスは低値37.9%、中等度47.7%、高値14.4%。Ki67中央値は49.0%(3.0%-96.0%)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果、主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)はデュルバルマブ群53.4%に対してプラセボ群44.2%(P=0.287)、デュルバルマブ群の方が病理学的完全奏効率(pCR)は高率であるが統計学的有意な差は確認されなかった。

なお、事前に予定されていたサブグループ解析の結果、化学療法前にデュルバルマブが投与されている患者群における病理学的完全奏効率(pCR)はデュルバルマブ群61.0%に対してプラセボ群41.4%、病期ステージIIa以上の患者群ではデュルバルマブ群55.4%に対してプラセボ群38.6%、40歳未満の患者群ではデュルバルマブ群69.2%に対してプラセボ群42.9%、デュルバルマブ群で病理学的完全奏効率(pCR)が統計学的有意に上昇した。

一方の安全性として、デュルバルマブ群において65人の患者で免疫関連副作用irAE)が確認され、少なくとも1度の重篤な免疫関連副作用(irAE)を発症した患者は27.6%であった。

以上のGeparNuevo試験の結果よりSibylle Loibl氏らは以下のように結論を述べている。”トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としてのデュルバルマブ+標準化学療法は病理学的完全奏効率(pCR)を向上させ、忍容性も良好でした。”

Randomized phase II neoadjuvant study (GeparNuevo) to investigate the addition of durvalumab to a taxane-anthracycline containing chemotherapy in triple negative breast cancer (TNBC).(ASCO 2018, Abstract No.104)

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