・SANDPIPER試験とは、アロマターゼ阻害薬治療後の閉経後PIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性HER2陰性局所進行または転移性乳がん患者に対してPI3K阻害薬であるtaselisib+フルベストラント併用療法のプラセボ療法に対する有効性を比較検証した第III相試験である
・本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はtaselisib群7.4ヶ月に対してプラセボ群5.4ヶ月、taselisib群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを30%統計学的有意に減少した
・taselisib群で最も確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下痢、高血糖、大腸炎、口内炎であった
2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、アロマターゼ阻害薬治療後の閉経後PIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性HER2陰性局所進行または転移性乳がん患者に対するPI3K阻害薬であるtaselisib(GDC-0032)+フルベストラント併用療法のプラセボ療法に対する有効性を比較検証した第III相のSANDPIPER試験(NCT02340221)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Jose Baselga氏らにより公表された。
SANDPIPER試験とは、アロマターゼ阻害薬治療後の閉経後PIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性HER2陰性局所進行または転移性乳がん患者(N=516人)に対して1日1回taselisib4mg+フルベストラント500mg併用療法を投与する群(N=340人)、またはプラセボ+フルベストラント500mg併用療法を投与する群(N=176人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、臨床的有用率(CBR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した二重盲検化下の第III相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はtaselisib群7.4ヶ月に対してプラセボ群5.4ヶ月、taselisib群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを30%統計学的有意に減少した(ハザード比:0.70,p=.0037)。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はtaselisib群28.0%に対してプラセボ群11.9%(p=.0002)、臨床的有用率(CBR)はtaselisib群51.5%に対してプラセボ群37.3%、奏効持続期間(DOR)中央値はtaselisib群8.7ヶ月に対してプラセボ群7.2ヶ月であった。なお、全生存期間(OS)はイベント数未到達のためにデータが未成熟であった。
一方の安全性としては、taselisib群で最も確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下痢12%、高血糖10%、大腸炎3%、口内炎2%であった。なお、治療関連有害事象(TRAE)のために治療中止に至った患者はtaselisib群17%に対してプラセボ群2%、減量治療に至った患者はtaselisib群37%に対してプラセボ群2%であった。
以上の第III相のSANDPIPER試験の結果よりJose Baselga氏らは以下のように結論を述べている。”アロマターゼ阻害薬治療後の閉経後PIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性HER2陰性局所進行または転移性乳がん患者に対してtaselisib4mg+フルベストラント併用療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。また、過去に確認されたtaselisibの安全性プロファイルと一致しており、本試験で新たに確認された治療関連有害事象(TRAE)はありませんでした。”