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急性骨髄性白血病(AML)患者に対する次世代シークエンシング(NGS)結果に基づいた治療変更の有用性

この記事の3つのポイント
・本試験では、新規または再発難治性急性骨髄性白血病患者(N=1470人)に対して急性骨髄性白血病の17種類の関連遺伝子を特定する次世代シークエンシング(NGS)を実施し、その後遺伝子変異が同定された患者に対して治療変更する群としない群に分けて奏効率(RR)を比較検証している
・本試験の結果、新規急性骨髄性白血病患者に対して次世代シークエンシング(NGS)の結果に基づき治療変更をした患者の奏効率は72%に対して治療変更をしなかった患者の奏効率は60%であった(P=0.04)
・本試験の結果、再発難治性急性骨髄性白血病患者に対して次世代シークエンシング(NGS)の結果に基づき治療変更をした患者の奏効率は31%に対して治療変更をしなかった患者の奏効率は21%であった(P=0.001)

2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、急性骨髄性白血病患者に対して関連遺伝子変異を同定する次世代シークエンシング(NGS)の結果に基づいた治療選択の有用性の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Rita Elias Assi氏らにより公表された。

本試験では、新規または再発難治性急性骨髄性白血病患者(N=1470人)に対して急性骨髄性白血病関連遺伝子であるALK、CSF1R、FGFR1/2/3、FLT3、IDH1/2、JAK2、KDR、KRAS/NRAS、NPM1、PDGFRA、PTPN11、RET、TP53の17種類の遺伝子を特定する次世代シークエンシング(NGS)を実施し、その後遺伝子変異が同定された患者に対して治療変更をする群としない群に分けて奏効率(RR)を比較検証している。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値63歳(17-92歳)。性別は男性62%(N=782人)。遺伝子変異個数中央値は2個(1-5)、その種類はTP53は16%(N=241人)、IDH2は16%(N=240人)、IDH1は16%(N=238人), FLT3は14%(N=200人)、NPM1は13%(N=195人)、NRASは12%(N=175人)、JAK2は7%(N=103人)、KRASは6%(N=82人)。

病期は、新規急性骨髄性白血病患者は519人でその内75%(N=390人)が遺伝子変異あり、再発難治性急性骨髄性白血病患者は463人でその内その内73%(N=338人)が遺伝子変異あり。

以上の背景を有する患者に対して次世代シークエンシング(NGS)後に遺伝子変異が同定された場合に治療を変更した結果は下記の通りである。遺伝子変異あり新規急性骨髄性白血病患者(N=390)の内、臨床試験または承認外治療により標的治療を実施した23%の患者(N=91人)の奏効率は72%に対して標的治療を実施しなかった77%の患者(N=299人)の奏効率は60%(P=0.04)であった。

また、遺伝子変異あり再発難治性急性骨髄性白血病患者(N=463)の内、臨床試験または承認外治療により標的治療を実施した51%の患者(N=173人)の奏効率は31%に対して標的治療を実施しなかった49%の患者(N=290人)の奏効率は21%(P=0.001)であった。

以上の試験結果よりRita Elias Assi氏らは以下のように結論を述べている。”急性骨髄性白血病患者に対する次世代シークエンシング(NGS)の診断結果は、30%以上の患者に対して治療変更の影響を及ぼす可能性が示唆されました。特に、この治療変更は新規急性骨髄性白血病患者よりも再発難治性急性骨髄性白血病患者で顕著でした。”

Impact of next-generation sequencing (NGS) on treatment selection in acute myeloid leukemia (AML).(ASCO 2018, Abstract No.103)

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