・本試験はアバスチン治療歴のないデキサメタゾン治療歴のある再発性膠芽腫(rGBM)患者に対して抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ+抗VEGF抗体薬であるアバスチン併用療法、キイトルーダ単剤療法の有効性を検証した第II相試験である
・本試験の主要評価項目であるiRANO基準に基づく6ヶ月無増悪生存率(PFS rate)は併用群26.0%に対して単剤群6.7%であった
・本試験の副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は併用群8.78ヶ月に対して単剤群10.26ヶ月であった
2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、再発性膠芽腫(rGBM)患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)+抗VEGF抗体薬であるベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法、またはキイトルーダ単剤療法の有効性を比較検証する第II相試験(NCT02337491)の結果がDana-Farber Cancer Institute and Harvard Medical School・David A. Reardon氏らにより公表された。
本試験は、アバスチン治療歴のないデキサメタゾン治療歴のある再発性膠芽腫(rGBM)患者(N=80人)に対して3週間に1回キイトルーダ200mg+2週間に1回アバスチン10mg/kgを併用療法を投与する群(N=50人)、または3週間に1回キイトルーダ200mg単剤療法を投与する群(N=30人)に振り分け、主要評価項目としてiRANO基準に基づく6ヶ月無増悪生存率(PFS rate)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを検証した第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は併用群、単剤群それぞれ下記の通りである。年齢中央値は併用群52歳(42-59歳)に対して単剤群55歳(42-62歳)。性別は男性70.0%(N=35人)に対して63.3%(N=19人)。Karnofsky Performance Statusスコアはスコア90-100が52.0%(N=26人)に対して43.4%(N=13人)、スコア80が34.0%(N=17人)に対して53.3%(N=16人)、スコア70が14.0%(N=7人)に対して3.3%(N=1人)。
デキサメタゾン治療開始時期は治験開始時24.0%(N=12人)に対して23.3%(N=7人)、治験中13.2%(N=5人)に対して21.7%(N=5人)。MGMT遺伝子のプロモーター領域はメチル化40.0%(N=20人)に対して30.0%(N=9人)、非メチル化34.0%(N=17人)に対して33.3%(N=10人)。IDH1遺伝子ステータスはIDH1遺伝子変異型16.0%(N=8人)に対して13.3%(N=4人)、IDH1遺伝子野生型70.0%(N=35人)に対して70.0%(N=21人)。
以上の背景を有する患者に対する結果は下記の通りである。主要評価項目であるiRANO基準に基づく6ヶ月無増悪生存率(PFS rate)は併用群26.0%(95%信頼区間:16.3%-41.5%)に対して単剤群6.7%(95%信頼区間:1.8%-2.5%)であった。また、無増悪生存期間(PFS)中央値は併用群4.09ヶ月(95%信頼区間:2.79-5.52ヶ月)に対して単剤群1.43ヶ月(95%信頼区間:1.38-2.70ヶ月)であった。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は併用群8.78ヶ月(95%信頼区間:7.69-14.17ヶ月)に対して単剤群10.26ヶ月(95%信頼区間:8.45-12.46ヶ月)であった。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。併用群では高血圧20%(N=10人)、頭痛8%(N=4人)、感染2%(N=1人)、下痢2%(N=1人)、単剤群では頭痛10%(N=3人)、高血糖3%(N=1人)、脳浮腫3%(N=1人)であった。
以上の第II相試験の結果よりDavid A. Reardon氏らは以下のように結論を述べている。”再発性膠芽腫患者に対する抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ+抗VEGF抗体薬であるアバスチン併用療法、キイトルーダ単剤療法はともに忍容性は問題ありませんでした。一方、有効性においてはキイトルーダ単剤療法では十分な効果が確認できず、キイトルーダ+アバスチン併用療法もアバスチン単剤療法の治療成績を上回りませんでした。”