株式会社LSIメディエンス(以下「LSIメディエンス」)は、再生医療等製品の安全性や品質管理への利用が期待されているデジタル軟寒天コロニー形成試験を行う技術「特願2014−176861(発明の名称:悪性形質転換細胞の検出方法)」について、公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団(以下「HS財団」)と国内独占的通常実施許諾契約(再実施権付与権付き)を締結した。
本技術は,細胞集団の中に混在しているがん化した細胞の検出に関して既存法に比べて大幅に感度を向上させ、再生医療等製品の安全性評価に大きく貢献する技術として国内外から注目されている。
LSIメディエンス創薬支援事業本部では、デジタル軟寒天コロニー形成試験の受託試験サービスを2018 年度より開始している。
デジタル軟寒天コロニー形成試験は、軟寒天ゲルの中で細胞を一定期間培養し、足場があることで増殖するがん化した細胞を検出する方法である(図1)。
国立医薬品食品衛生研究所(以下「国衛研」)再生・細胞医療製品部⻑ 佐藤陽治博士、同部主任研究官 草川森士博士らは、1,000 万個のヒト初代間葉系幹細胞(hMSC)を培養した後、1 個の Hela 細胞(子宮頸がん由来のがん細胞株)を混入させた細胞集団を図1のように準備した 160 の培養ウェルに 30 日間培養した後,1個の細胞コロニーを検出することに 6 回の試行のうち 4 回成功した。
この成果はHS財団から出願され,2015 年に論文発表された(Kusakawa S., et al. Sci. Rep. 2015)。
この論文は,現在薬事申請に用いられている軟寒天コロニー形成試験と比較して、1 万倍程度の感度の向上を報告したものであり、1億個以上の細胞を人体に投与することが想定される再生医療の安全性評価に必要とされる検出感度を達成する方法を初めて報告したものである(表1)。
LSIメディエンスはHS財団が維持していた当該技術の有用性に着目し、国衛研およびHS財団と本発明の実施に向けた協議を 2016 年から開始し、1 年半の試用期間を経て論文の再現性に成功した(図2)。
統計学的には,デジタル軟寒天コロニー形成試験を 7回試行し、各回にて 107個の細胞製品から 1 個もコロニーが検出されなかった場合,Hela細胞相当のがん細胞が1千万分の1の割合で混入していないことを示す結果となる(偽陰性のリスクを 1%とした場合)。
LSIメディエンスは、現在進んでいるデジタル軟寒天コロニー形成試験を含めた再生医療等製品の安全性試験の標準化を目指した官⺠プロジェクトにも参画しており、日本が生んだこの技術が再生医療等製品の開発に広く活用されていくことに貢献されている。