・乳がん患者の血中循環腫瘍細胞CTCと再発率を検討した試験結果
・ホルモン受容体陽性乳がん患者のCTCは再発リスク因子となる
・リキッドバイオプシーによる再発リスクの層別が重要な可能性
2018年7月26日、医学誌『JAMA Oncology』にて診断後5年以上経過した乳がん患者における血中循環腫瘍細胞(CTC)陽性率と再発率の関係性について検証したランダム化試験(NCT00433511)の結果がMontefiore Medical Center・Joseph Sparano氏らにより公表された。
本試験は、原発巣切除後に術後化学療法としてドキソルビシン+シクロスファミド併用療法、その後にパクリタキセル+ベバシズマブまたはプラセボ併用療法の有効性を比較検証する第III相のE5103試験(NCT00433511)に参加したHER2陰性ステージIIまたはIII乳がん患者を対象に、血中循環腫瘍細胞(CTC)に発現と診断5年以上の再発率の関係性について検証した二重盲検下ランダム化試験の結果である。
本試験に登録された血中循環腫瘍細胞(CTC)陽性率別の患者背景は下記の通りである。年齢は50歳未満が血中循環腫瘍細胞(CTC)陽性郡54%(N=14人)に対して陰性郡44%
(N=228人)、50歳以上が46%(N=12人)に対して56%(N=293人)。腫瘍径は2cm以下が38%(N=10人)に対して41%(N=215人)、2cmより大きく5cm以下が54%(N=14人)に対して50%(N=259人)、5cm以上が8%(N=2人)に対して9%(N=46人)。
リンパ節転移の有無は陰性が19%(N=5人)に対して28%(N=145人)、1~3個が23%(N=6人)に対して43%(N=223人)、4個以上が58%(N=15人)に対して29%(N=153人)。ホルモン受容体陽性率は陰性31%(N=8人)に対して36%(N=185人)、陽性69%(N=18人)に対して64%(N=335人)。以上のように両群間における患者背景の統計学有意な差は確認されなかった。
本試験の結果、血中循環腫瘍細胞(CTC)発現陽性乳がん患者26人の内18人がホルモン受容体陽性、8人がホルモン受容体陰性乳がんであった。再発が確認された7人全ての患者はホルモン受容体陽性、再発が確認されなかった19人の患者の内ホルモン受容体陽性11人、ホルモン受容体陰性8人であった。
また、血中循環腫瘍細胞(CTC)発現陽性ホルモン受容体陽性乳がん患者は血中循環腫瘍細胞(CTC)発現陰性ホルモン受容体陽性乳がん患者に比べて再発の相対危険度(RR)は10.82(95%信頼区間:4.42-26.47,P<0.001)であった。
そして、多変量解析によるホルモン受容体陽性乳がん患者における因子別の再発ハザード比は下記の通りである。血中循環腫瘍細胞(CTC)発現陰性郡に対する陽性郡の再発ハザード比は13.13(95%信頼区間:4.74-36.33)。腫瘍径2cm以下郡に対する2cmより大きく5cm以下郡の再発ハザード比は3.37(95%信頼区間:0.96-11.79)、腫瘍径2cm以下郡に対する5cmより大きい郡の再発ハザード比は3.53(95%信頼区間:0.69-17.97)。
リンパ節転移なし郡に対するリンパ節転移1-3個郡の再発ハザード比は2.42(95%信頼区間:0.29-19.59)、リンパ節転移なし郡に対するリンパ節転移4個以上郡の再発ハザード比は2.18(95%信頼区間:0.27-17.64)。年齢50歳未満郡に対する年齢50歳以上郡の再発ハザード比は1.92(95%信頼区間:0.77-4.78)であった。
以上のランダム化試験の結果よりJoseph Sparano氏らは以下のように結論を述べている。”ホルモン受容体陽性乳がん患者における5年後再発リスクの独立した因子として血中循環腫瘍細胞(CTC)発現率は有効であり、リキッドバイオプシーにより再発リスク因子を層別化する方法は臨床において重要な示唆を提供するでしょう。”