・遺伝子変異陽性乳がんの患者を対象にしたタラゾパリブの有効性を検証した第Ⅲ試験
・医師選択の標準治療群とタラゾパリブ群を比較した
・標準治療群にくらべタラゾパリブ群は無増悪生存期間を延長した
2018年8月15日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて、生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性乳がん患者に対するポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ
(PARP)阻害薬であるタラゾパリブ単剤療法の有効性を検証した第III相のEMBRACA試験(NCT01945775)の結果がMD Anderson Cancer Center・Jennifer K. Litton氏らにより公表された。
EMBRACA試験とは、生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性乳がん患者(N=431人)に対して1日1回タラゾパリブ1mg単剤療法を投与する群(N=287人)、または主治医が選択した標準治療(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、ビノレルビンのいずれか)を投与する群(N=144人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を比較検証した国際多施設共同の第III相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はタラゾパリブ群45歳に対して標準治療群50歳。ECOG Performance Statusはタラゾパリブ群でスコア0が53.3%、スコア1が44.3%、スコア2.1%に対して標準治療群でスコア0が58.3%、スコア1が39.6%、スコア1.4%。
臨床病期はタラゾパリブ群で局所進行性5.2%(N=15人)、転移性94.4%(N=271人)に対して標準治療群で局所進行性6.2%(N=9人)、転移性93.8%(N=135人)。ホルモン受容体ステータスはタラゾパリブ群でトリプルネガティブ45.3%(N=130人)、ホルモン受容体陽性54.7%(N=157人)に対して標準治療群でトリプルネガティブ41.7%(N=60人)、ホルモン受容体陽性58.3%(N=84人)。
術前化学療法または術後化学療法の治療歴はタラゾパリブ群であり82.9%(N=238人)に対して標準治療群で84.0%(N=121人)。なお、標準治療群の内訳はカペシタビン44%、エリブリン40%、ゲムシタビン10%、ビノレルビン7%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタラゾパリブ群8.6ヶ月(95%信頼区間:7.2-9.3ヶ月)に対して標準治療群5.6ヶ月(95%信頼区間: 4.2-6.7ヶ月)、タラゾパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを46%統計学有意に減少(HR:0.54,95%信頼区間:0.41-0.71,P<0.001)した。
また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はタラゾパリブ群62.6%(95%信頼区間:55.8 %-69.0%)に対して標準治療群 27.2%(95%信頼区間:19.3%-36.3%)、タラゾパリブ群で高い奏効率を示した(OR:5.0,95%信頼区間:2.9-8.8,P<0.001)。
全生存期間(OS)中央値はタラゾパリブ群22.3ヶ月(95%信頼区間:18.1-26.2ヶ月)に対して標準治療群 19.5ヶ月(95信頼区間:16.3-22.4ヶ月)、タラゾパリブ群で死亡(OS)のリスクを24%減少(HR:0.76,95%信頼区間:0.55-1.06,P=0.11)した。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)はタラゾパリブ群98.6%(N=282人)、標準治療群97.6%(N=123人)で確認され、最も多くの患者で確認されたのはタラゾパリブ群では貧血、疲労、吐き気、標準治療群では吐き気、疲労、好中球減少症である。
また、グレード3/4の血液関連有害事象(TRAE)はタラゾパリブ群55%、標準治療群38%、グレード3/4の非血液関連有害事象(TRAE)はタラゾパリブ群32%、標準治療群38%の患者で確認され、治療関連有害事象(TRAE)のため治療中止に至った患者はタラゾパリブ群5.9%、標準治療群8.7%であった。
以上のEMBRACA試験の結果よりJennifer K. Litton氏らは以下のように結論を述べている。”BRCA1/2遺伝子変異陽性陽性の進行性乳がん患者タラゾパリブ単剤療法は、現在の標準化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”