2018年9月21日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてBRCA1/2遺伝子変異陽性転移性乳がん患者に対するRNAポリメラーゼII阻害薬であるLurbinectedin(PM1183)単剤療法の有効性、安全性を検証した第II相試験(NCT01525589)の結果がConquer Cancer Foundation・Cristina Cruz氏らにより公表された。
本試験は、転移性乳がん患者(N=89人)をBRCA1/2遺伝子変異ステータス別にBRCA1/2遺伝子変異陽性群(アームA;N=54人)、BRCA1/2遺伝子変異陰性または不明群(アームB;N=35人)に分け、3週間に1回Lurbinectedin7mg(アームAは平均投与サイクル9サイクル目以降で3.5mg/m2へ変更)単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)等を検証した第II相試験である。
本試験に登録された患者背景はアームA、アームBそれぞれ下記の通りである。年齢中央値はアームAで43歳(30-73歳)に対してアームBで52歳(32-70歳)。BRCA遺伝子変異ステータスはアームAでBRCA1遺伝子変異陽性57%(N=31人)、BRCA2遺伝子変異陽性43%(N=23人)に対してアームBでBRCA1/2遺伝子変異陰性26%(N=9人)、不明74%(N=26人)。
ECOG Performance StatusはアームAでスコア0が57%(N=30人)、スコア1が43%(N=23人)に対してアームBでスコア0が63%(N=22人)、スコア1が47%(N=13人)。受容体ステータスはアームAでトリプルネガティブ56%(N=30人)、HR陽性HER2陰性41%(N=22人)、HR陽性HER2陽性4%(N=2人)に対してアームBでトリプルネガティブ49%(N=17人)、HR陽性HER2陰性41%(N=14人)、HR陽性HER2陽性11%(N=4人)。
転移個数はアームAで2個以下46%(N=25人)、3個以上54%(N=29人)に対してアームBで2個以下60%(N=21人)、3個以上40%(N=14人)。転移部位はアームAでリンパ節59%(N=32人)、肝臓52%(N=28人)、骨54%(N=29人)、中枢神経系(CNS)6%(N=3人)、肺44%(N=24人)に対してアームBでリンパ節51%(N=18人)、肝臓60%(N=21人)、骨49%(N=17人)、中枢神経系(CNS)0%、肺29%(N=10人)
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はアームA群で完全奏効(CR)2人、部分奏効(PR)20人を含む41%(95%信頼区間:28%-55%)を示した。なお、アームB群の客観的奏効率(ORR)は9%(95%信頼区間:2%-24%)を示した。
またサブグループ解析の結果、BRCA遺伝子変異ステータス別の客観的奏効率(ORR)はBRCA1遺伝子変異陽性群で26%(95%信頼区間:11.9%-44.6%)、BRCA2遺伝子変異陽性群で61%(95%信頼区間:38.5%-80.3%)を示した。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアームA群で4.6ヶ月(95%信頼区間:3.0-6.0ヶ月)、BRCA1遺伝子変異陽性群で3.0ヶ月、BRCA2遺伝子変異陽性群で5.9ヶ月。全生存期間(OS)中央値はアームA群で20.0ヶ月(95%信頼区間:11.8-26.6ヶ月)、BRCA1遺伝子変異陽性群で15.9ヶ月、BRCA2遺伝子変異陽性群で26.6ヶ月。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの非血液関連の治療関連有害事象(TRAE)はアームA群で吐き気74%(N=14人)、倦怠感74%(N=14人)。また、グレード3以上の血液関連の治療関連有害事象(TRAE)はアームA群で貧血26%(N=9人)、リンパ球減少症43%(N=15人)、好中球減少症71%(N=25人)、血小板減少性29%(N=10人)。
以上の第II相試験の結果よりCristina Cruz氏らは以下のように結論を述べている。”RNAポリメラーゼII阻害薬であるLurbinectedin(PM1183)は、BRCA1/2遺伝子変異陽性特にBRCA2遺伝子変異陽性転移性乳がん患者に対して高い抗腫瘍効果を示しました。”
http://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2018.78.6558