2018年10月11日、医学誌『JAMA Oncology』にてホルモン受容体陽性男性乳がん患者に対する術後ホルモン療法の有効性を検証した後ろ向きコーホート試験の結果がUniversity of Pennsylvania・Sriram Venigalla氏らにより公表された。
本試験は、2004年から2014年に米国National Cancer Databaseに登録されたホルモン受容体陽性男性乳がん患者(N=10173人)を対象に術後療法としてホルモン療法による治療を受けた群(N=6847人)、治療を受けていない群(N=3326人)に分け、評価項目として全生存期間(OS)を検証した後ろ向きコーホート試験である。
本試験が実施された背景として、男性乳がんは全乳がんの約1%程度と非常に稀な疾患であるため、女性乳がんに比べて確立された標準治療が少ない点が挙げられる。以上のような背景より、本試験ではホルモン受容体陽性乳がん男性患者に対する術後ホルモン療法の有効性を検証することを目的に開始された。
本試験に登録された患者背景はそれぞれ下記の通りである。年齢はホルモン療法群で18-49歳が11.6%(N=795人)、50-69歳が49.7%(N=3401人)、70歳以上が38.7%(N=2651人)に対してホルモン療法なし群で18-49歳が11.3%(N=379人)、50-69歳が44.7%(N=1487人)、70歳以上が43.9%(N=1460人)。
人種はホルモン療法群で非ヒスパニック系白人83.8%(N=5737人)、非ヒスパニック系黒人10.3%(N=704人)、ヒスパニック系2.7%(N=185人)、その他3.2%(N=221人)に対してホルモン療法なし群で非ヒスパニック系白人81.0%(N=2694人)、非ヒスパニック系黒人11.4%(N=380人)、ヒスパニック系3.5%(N=117人)、その他4.0%(N=135人)。
進行病期はホルモン療法群でステージIが40.2%(N=2756人)、ステージIIが44.4%(N=3041人)、ステージIIIが15.3%(N=1050人)に対してホルモン療法なし群でステージIが42.7%(N=1421人)、ステージIIが41.2%(N=1371人)、ステージIIIが16.0%(N=534人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の多変量解析の結果は下記の通りである。
評価項目である全生存期間(OS)中央値はホルモン療法群11.0年に対してホルモン療法なし群10.3年、ホルモン療法群で死亡(OS)のリスクを28%統計学有意に減少(ハザード比:0.72,95%信頼区間:0.65-0.79,P < .001)を示した。
また、5年全生存率(OS)はホルモン療法群81.8%に対してホルモン療法なし群72.0%、10年全生存率(OS)はホルモン療法群57.8%に対してホルモン療法なし群50.6%を示した。
以上の後ろ向きコーホート試験の結果よりSriram Venigalla氏らは以下のように結論を述べている。”ホルモン受容体陽性乳がん男性患者に対する術後ホルモン療法は、全生存期間(OS)を統計学有意に改善することが本試験より示されました。”