・未治療の進行性メルケル細胞がん患者が対象の第2相試験の長期間追跡結果
・キイトルーダ単剤療法の有効性を検証
・化学療法に比べて全生存期間等を改善、長期間治療でも忍容性に問題なし
2019年2月6日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて未治療の進行性メルケル細胞がん(MCC)患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性を検証した第2相試験(NCT02267603)の長期間追跡の結果がUniversity of WashingtonのPaul Nghiem氏らにより公表された。
本試験は、未治療の進行性メルケル細胞がん(MCC)患者(N=50人)に対して3週を1サイクルとして1日目にキイトルーダ2mg/kg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発症するまで最大2年間投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効持続期間(DOR)などを検証した単アームオープンラベルの第2相試験である。
本試験が実施された背景として、近年まで進行性メルケル細胞がん(MCC)の標準治療は殺細胞性抗がん剤ベースの治療であったが、その無増悪生存期間(PFS)は約90日程度であった。しかし、2017年に抗PD-L1抗体薬であるアベルマブ(商品名バベンチオ)がFDAより承認されて以降、進行性メルケル細胞がん(MCC)の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)は改善している。
そして、現在は進行性メルケル細胞がん(MCC)の標準治療として抗PD-1/PD-L1抗体薬が殺細胞性抗がん剤ベースの治療前に投与されている。そこで本試験では、未治療の進行性メルケル細胞がん(MCC)患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法の有用性を長期間に渡り検証することを目的にして実施された。本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢
中央値=70.5歳(46-91歳)
65歳未満=20%(N=10人)
65歳以上=80%(N=40人)
性別
男性=68%(N=34人)
女性=32%(N=16人)
進行病期
ステージIIIB=14%(N=7人)
ステージIV=86%(N=43人)
スコア0=48%(N=24人)
スコア1=52%(N=26人)
メルケル細胞ポリオーマウイルス
陽性=64%(N=32人)
陰性=36%(N=18人)
腫瘍細胞におけるPD-L1発現率
陽性=49%(N=23人)
陰性=51%(N=24人)
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は56%(95%信頼区間:41.3-70.0%)、奏効の内訳は完全奏効(CR)24%(95%信頼区間:13.1-38.2%,N=12人)、部分奏効(PR)32%(95%信頼区間:19.5-46.7%,N=16人)を示した。
なお、病勢安定(SD)10%(95%信頼区間:3.3-21.8%,N=5人)、病勢進行(PD)32%(95%信頼区間:19.5-46.7%,N=16人)であった。
副次評価項目である奏効を示した患者群(N=28人)における奏効持続期間(DOR)中央値は未到達(95%信頼区間:5.9-34.5ヶ月)。無増悪生存期間(PFS)中央値は16.8ヶ月(95%信頼区間:4.6ヶ月-未到達)、24ヶ月無増悪生存率(PFS)は48.3%。また、全生存期間(OS)中央値は未到達(95%信頼区間:26.0ヶ月-未到達)、24ヶ月全生存率(OS)は68.7%。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は96%(N=48/50人)、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は28%(N=14/50人)、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は14%(N=7/50人)を示した。
以上の第2相試験の長期間追跡の結果よりPaul Nghiem氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の進行性メルケル細胞がん(MCC)患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、化学療法の治療成績に比べて全生存期間(OS)等を改善しています。そして、長期間治療でも忍容性に問題はありませんでした。”