・少なくとも1度のホルモン療法治療歴のあるホルモン受容体陽性進行性乳がん患者が対象の第3相試験
・Tucidinostat+エキセメスタン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・Tucidinostat群で病勢進行または死亡のリスクが25%統計学的有意に減少
2019年4月26日、医学誌『The Lancet Oncology』にて少なくとも1度のホルモン療法治療歴のあるホルモン受容体陽性進行性乳がん患者に対する経口ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬であるTucidinostat+エキセメスタン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT02482753)の結果がThe Fifth Medical Centre of Chinese PLA General HospitalのZefei Jiang氏らにより公表された。
本試験は、少なくとも1度のホルモン療法治療歴のあるホルモン受容体陽性HER2陰性進行性乳がん患者(365人)に対して1週間に2回Tucidinostat 30mg+1日1回エキセメスタン25mg併用療法を投与する群(N=244人)、またはプラセボ+1日1回エキセメスタン25mg併用療法を投与する群(N=121人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した多施設共同二重盲検プラセボ比較の第3相試験である。
なお、本試験に登録された患者条件は下記の通りである。年齢は閉経後60歳以上、または60歳未満の場合はエストラジオール濃度が閉経後に値する。ECOG Performance Statusはスコア0または1。ホルモン受容体ステータスは陽性、HER2ステータスは陰性。
本試験が実施された背景として、別の探索試験にてホルモン受容体陽性進行性乳がん患者に対するTucidinostat+エキセメスタン併用療法の抗腫瘍効果が確認されているためである。以上の背景より、大規模試験にて本治療の有用性を検証するため本試験が実施された。
本試験の治療期間中央値13.9ヶ月(9.8−17.5ヶ月)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はTucidinostat群7.4ヶ月(95%信頼区間:5.5−9.2ヶ月)に対してプラセボ群3.8ヶ月(95%信頼区間:3.7−5.5ヶ月)、Tucidinostat群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを25%統計学的有意に減少した(HR:0.75,95%信頼区間:0.58-0.98,P=0.033)。
一方の安全性として、Tucidinostat群において多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症51%(N=124人,プラセボ群2%)、血小板減少性27%(N=67人,プラセボ群2%)、リンパ球減少症19%(N=46人,プラセボ群2%)を示した。また、重篤な有害事象(SAE)発症率はTucidinostat群21%(N=51人)に対してプラセボ群6%(N=7人)を示した。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人の患者でも確認されていない。
以上の第3相試験の結果よりZefei Jiang氏ら以下のように結論を述べている。”ホルモン療法治療歴のあるホルモン受容体陽性進行性乳がん患者に対するTucidinostat+エキセメスタン併用療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。また、プラセボ群に比べて治療関連有害事象(TRAE)発症率は高率でしたが、忍容性には問題ありませんでした。以上の結果より、本治療はホルモン療法治療歴のあるホルモン受容体陽性進行性乳がん患者の新しい治療選択肢になる可能性が示唆されました。”