・複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者が対象の第1相試験
・B細胞成熟抗原を標的とするCAR-T細胞療法であるbb2121の有効性・安全性を検証
・安全性プロファイルは特に問題なく、抗腫瘍効果も良好だった
2019年5月2日、医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対するB細胞成熟抗原(BMCA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT02658929)の結果がMassachusetts General HospitalのNoopur Raje氏らにより公表された。
本試験は、プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬を含む3種類以上の治療歴のあるまたは両薬剤クラスに抵抗性を有する再発難治性多発性骨髄腫患者に対して、bb2121を用量漸増期にはCAR陽性T細胞50×106個、150×106個、450×106個、800×106個のいずれかを単回輸注、用量拡大期にはCAR陽性T細胞150×106~450×106個を単回輸注し、主要評価項目として治療関連有害事象(TRAE)発症率、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)を検証した第1相試験である。
本試験が実施された背景として、前臨床試験にてB細胞成熟抗原(BMCA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の有用性が多発性骨髄腫細胞において示されているためである。本試験のデータカットオフ値bb2121輸注最終日より6.2ヶ月時点における結果は下記の通りである。
主要評価項目である安全性としては、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は好中球減少症85%、白血球減少症58%、貧血45%、血小板減少症45%などであった。なお、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法特有の有害事象(AE)であるサイトカイン放出症候群、神経毒性の発症率はそれぞれ下記の通りである。サイトカイン放出症候群は全グレードで76%(N=25人)、グレード1または2で70%(N=23人)、グレード3で6%(N=2人)、神経毒性は全グレードで42%(N=14人)、グレード1または2で39%(N=13人)、グレード4で3%(N=1人)の患者で確認された。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は85%を示し、その内45%(N=15人)の患者が完全奏効(CR)を達成した。また、部分奏効(PR)以上の奏効が得られ、微小残存病変(MRD)の評価可能であった患者16人全例で微小残存病変(MRD)陰性を達成した。無増悪生存期間(PFS)中央値は11.8ヶ月(95%信頼区間:6.2~17.8ヶ月)を示した。なお、CAR-T細胞の増加は奏効と関連しており、CAR-T細胞は輸注1年後まで持続していた。
以上の第1相試験の結果よりNoopur Raje氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の安全性プロファイルは特に問題なく、抗腫瘍効果を良好であった。”