・未治療の転移性腎細胞がん患者が対象の第3相試験
・ファーストライン治療としてのテセントリク+アバスチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・スーテント単剤療法に比べて無増悪生存期間を統計学的有意に改善
2019年5月9日、医学誌『THE LANCET』にて未治療の転移性腎細胞がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-L1抗体薬であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)+ベバシズマブ(商品名アバスチン;以下アバスチン)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のIMmotion151試験(NCT02420821)の結果がTaussig Cancer InstitutenのBrian I Rini氏らにより公表された。
IMmotion151試験とは、未治療の転移性腎細胞がん患者(N=915人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてテセントリク1200mg+アバスチン15mg/kg併用療法を投与する群(N=454人)、または1日1回スニチニブ(商品名スーテント;以下スーテント)50mg単剤療法を4週間投与し、2週間休薬するサイクルで投与する群(N=461人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目としてPD-L1発現率陽性患者群における無増悪生存期間(PFS)、ITT集団(intention to treat)における全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同オープンラベルランダム化の第3相試験である。なお、本試験に登録された915人の患者の内40%に該当する362人の患者はPD-L1陽性を示している。
本試験が実施された背景として第2相試験にて、転移性腎細胞がん患者に対する抗PD-L1抗体薬テセントリク+アバスチン併用療法はスーテント単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善することが示されている。以上の背景より第3相試験にて本治療の有用性が検証された。
本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるPD-L1発現率陽性患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はテセントリク+アバスチン併用群11.2ヶ月に対してスーテント単剤群7.7ヶ月、テセントリク+アバスチン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを26%統計学的有意に改善した(HR:0.74,95%信頼区間:0.57−0.96,P=0.0217)。
またもう1つの主要評価項目であるITT集団(intention to treat)における全生存期間(OS)中央値はテセントリク+アバスチン併用群で死亡(OS)のリスクを7%改善するも統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.93,95%信頼区間:0.76−1.14)。
一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はテセントリク+アバスチン併用群40%(N=182/451人)に対してスーテント単剤群54%(N=240/446人)。また、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はテセントリク+アバスチン併用群5%(N=24/451人)に対してスーテント単剤群8%(N=37/446人)。
以上のIMmotion151試験の結果よりTaussig Cancer InstituteのBrian I Rini氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の転移性腎細胞がん患者に対するファーストライン治療としてのテセントリク+アバスチン併用療法は、スーテント単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。また、全生存期間(OS)では両群間で統計学的有意な差は確認されませんでしたので、今後長期的に本試験の結果をフォローアップしていく必要があります。”