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ホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対するイクスタンジ+アンドロゲン除去療法、全生存期間を改善する

この記事の3つのポイント
・ホルモン感受性転移性前立腺がん患者が対象の第3相試験
・イクスタンジ+アンドロゲン除去療法の有効性安全性を標準抗アンドロゲン剤と比較検証
・イクスタンジ群で3年死亡のリスクを33%統計学有意に減少した

2019年5月31日より6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、ホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対する経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬であるエンザルタミド(商品名イクスタンジ;イクスタンジ)+アンドロゲン除去療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のENZAMET試験(NCT02446405)の結果がMonash UniversityのIan D. Davis氏らにより公表され、6月2日付で『The New England Journal of Medicine』に掲載された。

ENZAMET試験とは、ホルモン感受性転移性前立腺がん患者(N=1125人)に対してイクスタンジ+アンドロゲン除去療法を投与する群、または標準抗アンドロゲン剤+アンドロゲン除去療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間OS)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを比較検証したオープンラベルランダム比較の第3相試験である。

本試験が実施された背景として、ホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対してアンドロゲン除去療法にイクスタンジを早期に加えることで去勢抵抗性になることを遅らせ、その結果全生存期間(OS)の改善になる可能性がある。以上の背景よりホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対するイクスタンジ+アンドロゲン除去療法の有用性が本試験により検証された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
イクスタンジ群=68.9歳
標準抗アンドロゲン剤群=68.8歳

グリソンスコア
イクスタンジ群=7以下27%(N=152人)、8-10が60%(N=335人)、不明13%(N=76人)
標準抗アンドロゲン剤群=7以下29%(N=163人)、8-10が57%(N=321人)、不明14%(N=78人)

臓器転移個数
イクスタンジ群=2.9±6.9個
標準抗アンドロゲン剤群=3.1±7.2

以上の背景を有する患者に対する本試験の死亡イベント数イクスタンジ群で102件、標準抗アンドロゲン剤群で143件時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である3年全生存率(OS)はイクスタンジ群80%に対して標準抗アンドロゲン剤群72%、イクスタンジ群で3年死亡(OS)のリスクを33%統計学有意に減少した(HR:0.67,95%信頼区間:0.52-0.86,P=0.002)。

また、副次評価項目であるPSA無増悪生存率(PFS)はイクスタンジ群67%に対して標準抗アンドロゲン剤群37%、イクスタンジ群でPSA病勢進行(PFSの)のリスクを61%統計学有意に減少した(HR:0.39,95%信頼区間:0.33-0.47, P<0.001)。clinical無増悪生存率(PFS)はイクスタンジ群68%に対して標準抗アンドロゲン剤群41%、イクスタンジ群でclinical病勢進行(PFS)のリスクを60%統計学有意に減少した(HR:0.40,95%信頼区間:0.33-0.49, P<0.001)。

一方の安全性として、グレード1の有害事象(AE)発症率はイクスタンジ群7%に対して標準抗アンドロゲン剤群14%、グレード2でイクスタンジ群36%に対して標準抗アンドロゲン剤群41%、グレード3でイクスタンジ群49%に対して標準抗アンドロゲン剤群35%、グレード4でイクスタンジ群7%に対して標準抗アンドロゲン剤群41%、グレード5でイクスタンジ群1%に対して標準抗アンドロゲン剤群1%。

イクスタンジ群において最も多くの患者で確認されたグレード3~5の治療関連有害事象(TRAE)は高血圧8%(N=43人)、発熱好中球減少症7%(N=37人)、疲労6%(N=31人)、好中球数減少6%(N=31人)であった。

以上のENZAMET試験の結果よりIan D. Davis氏らは以下のように結論を述べている。”ホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対する経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬イクスタンジ+アンドロゲン除去療法は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)ともに改善しました。”

Enzalutamide with Standard First-Line Therapy in Metastatic Prostate Cancer(N Engl J Med. 2019 June 2. doi: 10.1056/NEJMoa1903835)

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