・標準治療歴のあるIDH1変異を有する再発増悪神経膠腫患者が対象の第1相試験
・IDH1阻害薬DS1001b単剤療法の安全性を検証
・客観的奏効率は造影病変を有する群で17.1%、非造影病変を有する群で33.3%を示した
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて標準治療歴のあるIDH1変異を有する再発増悪神経膠腫患者に対するIDH1阻害薬であるDS1001b単剤療法の安全性を検証した第1相試験(NCT03030066)の結果が名古屋大学の夏目 敦至氏らにより公表された。
本試験は、標準治療歴のあるIDH1変異を有する再発増悪神経膠腫患者(N=47人)に対して1日2回DS1001b 125mg、250mg、500mg、700mg、1000mg、1400mgの6用量単剤療法を投与し、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、推奨投与量(RP2D)、副次的評価項目として安全性などを検証した多施設共同の第I相試験である。
本試験が実施された背景として、DS-1001bは血液脳関門を通過し、変異型IDH1 R132Xに対する経口選択的阻害薬であるため、IDH1変異を有する再発増悪神経膠腫患者に対して有用性がある可能性が示唆されている。以上の背景より本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は44.0歳(28-77歳)。性別は男性62%、女性38%。ECOG Performance Statusはスコア0が57%、スコア1が36%、スコア2が6%。初回診断時点よりの期間中央値は5.2年(0.5-15.3年)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である10%以上の患者で確認された有害事象(AE)発症率は皮膚の色素沈着過剰53.2%、下痢46.8%、そう痒29.8%、脱毛25.5%、関節痛25.5%、吐き気25.5%、頭痛21.3%、皮膚障害21.3%、皮膚乾燥19.1%、嘔吐19.1%、背部痛14.9%、好中球数減少14.9%などである。なお、1000mgの用量で用量制限毒性(DLT)がみられたが、最大耐量(MTD)は確認されなかった。
その他評価項目である客観的奏効率(ORR)は造影病変を有するグリオーマ群で17.1%、非造影病変を有するグリオーマ群で33.3%を示した。
以上の第1相試験の結果より夏目 敦至氏らは以下のように結論を述べている。”標準治療歴のあるIDH1変異を有する再発増悪神経膠腫患者に対するIDH1阻害薬DS1001b単剤療法は、最大耐量(MTD)は得られず、客観的奏効率(ORR)も17.1~33.3%示しました。”