・BTK阻害薬治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者が対象の第1相試験
・CD19標的キメラ抗原受容体T細胞療法の有効性・安全性を検証
・副次評価項目である客観的奏効率は81.8%、微小残存病変陰性化率は75%と良好であった
2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者に対するCD19標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるJCAR017(lisocabtagene maraleucel)の有効性、安全性を検証した第1相のTRANSCEND CLL 004試験(NCT03331198)の結果がCity of Hope’s anticoagulation clinicのTanya Siddiqi氏らにより公表された。
TRANSCEND CLL 004試験とは、再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者に対してJCAR017を50×10*6を投与する群、またはJCAR017を100×10*6を投与する群に分けて、主要評価項目として安全性、副次評価項目として抗腫瘍効果などを検証した第I相試験である。
本試験が実施された背景として、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)は再発、難治性を示す可能性の高い疾患である。現在、分子標的治療薬をはじめ新たな治療戦略が開発され、治療成績は徐々に改善されているものの、完全奏効率(CR)達成率、微小残存病変(MRD)陰性化率は依然として低いままである。以上の背景より、CD4+、CD8+のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を一定の割合で混合し投与するCD19標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞製剤であるJCAR017の有用性が本試験により検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
66歳(49-79歳)
性別
男性47.8%
女性52.2%
前治療歴
イブルチニブ100%
ハイリスク割合
82.6%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法特有の有害事象(AE)であるサイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的有害事象(NE)の発症率は、全グレードのサイトカイン放出症候群(CRS)は73.9%、グレード3では8.7%。全グレードの神経学的有害事象(NE)は39.1%、グレード3以上では21.7%を示した。
また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は81.8%(95%信頼区間:59.7%-94.8%,N=18/22人)、微小残存病変(MRD)陰性化率75%(N=15/20人)を示した。
以上のTRANSCEND CLL 004試験の結果よりTanya Siddiqi氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者に対するCD19標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるJCAR017は、BTK阻害薬などの分子標的薬による前治療を受けた患者に対しても良好な客観的奏効率(ORR)、微小残存病変(MRD)陰性化率を示しました。”