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治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対するピロチニブ+ゼローダ、無増悪生存期間を統計学的有意に改善する

この記事の3つのポイント
・治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・ピロチニブ+ゼローダ併用療法有効性安全性プラセボと比較検証
・ピロチニブ群で無増悪生存期間は統計学的有意に改善

2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、抗HER2抗体薬であるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)、タキサン系抗がん剤治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害薬であるピロチニブ+カペシタビン(商品名ゼローダ;以下ゼローダ)併用療法の有効性、安全性を検証した第3相試験(NCT02973737)の結果がThe Affiliated Cancer Hospital of Xiangya School of MedicineのZefei Jiang氏らにより公表された。

本試験は、ハーセプチン、タキサン系抗がん剤治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者(N=279人)に対して21日を1サイクルとして1日1回ピロチニブ400mg+1~14日目に1日2回ゼローダ1000mg/m2併用療法を投与する群(N=185人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率ORR)、全生存期間OS)などを比較検証した多施設共同二重盲検下の第3相試験である。

本試験が実施された背景として、第1/2相試験にて転移性乳がん患者に対するピロチニブ+ゼローダ併用療法の抗腫瘍効果が確認されており、忍容性も問題ないことが判っているためである。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はピロチニブ群11.1ヶ月(95%信頼区間:9.66-16.53ヶ月)に対してプラセボ群4.1ヶ月(95%信頼区間:2.79-4.17ヶ月)、ピロチニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを82%(ハザード比:0.18,95%信頼区間:0.13-0.26,P<0.001)統計学的有意に改善した。また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はピロチニブ群68.6%(95%信頼区間:61.4-75.3%)に対してプラセボ群16.0%(95%信頼区間:9.2-25.0%)を示した。

一方の安全性として、5%以上の患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は下記の通りである。下痢がピロチニブ群30.8%に対してプラセボ群12.8%、手足症候群がピロチニブ群15.7%に対してプラセボ群5.3%を示した。

以上の第3相試験の結果よりZefei Jiang氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害薬ピロチニブ+ゼローダ併用療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。”

Pyrotinib combined with capecitabine in women with HER2+ metastatic breast cancer previously treated with trastuzumab and taxanes: A randomized phase III study.(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract No:1001)

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