・再発難治性多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・イサツキシマブ+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法の有効性・安全性を検証
・ポマリスト+デキサメタゾン併用療法と比較し、無増悪生存期間、客観的奏効率が改善した
2019年6月13日から16日までオランダ・アムステルダムで開催された欧州血液学会(EHA)にて、再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対する抗CD38モノクローナル抗体であるイサツキシマブ+ポマリドミド(商品名ポマリスト;以下ポマリスト)+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のICARIA-MM試験(NCT02990338)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのPaul Richardson氏らにより公表された。
ICARIA-MM試験とは、再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対して28日を1サイクルとして1, 8, 15,22日目にイサツキシマブ10mg/kg(2サイクル目以降は1,15日目)+1~21日目にポマリスト4mg+1, 8, 15, 22日目にデキサメタゾン40mg併用療法を投与する群、または28日を1サイクルとして1~21日目にポマリスト4mg+1, 8, 15, 22日目にデキサメタゾン40mg併用療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を比較検証した無作為化非盲検多施設共同第3相試験である。
本試験が実施された背景として、多発性骨髄腫の治療法の開発は近年急速に進展しているにも関わらず、未だに治癒のできない疾患である。そのため、治癒可能になる治療方法を開発する必要がある。以上の背景より、抗CD38モノクローナル抗体であるイサツキシマブベースの治療レジメンを開発するため本試験が実施された。
本試験に登録された307人(IPd群154人、Pd群153人)の全患者群の患者背景は下記の通りである。
年齢中央値は67歳(36-86歳)で、前治療中央値は3レジメン(2-11レジメン)。GFR値は60ml/min未満が33.9%であり、レブラミド不応例が92.5%、プロテアソーム不応例が75.9%、ハイリスク症例は19.5%だった。
以上の背景を有する患者群における本試験の結果は下記の通りである。フォローアップ期間中央値11.5ヶ月時点における無増悪生存期間(PFS)中央値はIPd群11.5ヶ月に対してPd群6.5ヶ月、IPd群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40.4%(ハザード比:0.596,95%信頼区間:0.44-0.81, P=0.001)統計学的有意に改善した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はIPd群60.4%に対してPd群35.3%(P<0.0001)、最良部分奏効率(VGPR)はIPd群31.8%に対してPd群8.5%を示した。全生存期間(OS)中央値は両群間で未到達であったが、IPd群で死亡(OS)のリスクを改善する傾向を示した(ハザード比: 0.687,95%信頼区間:0.461-1.023)。
また、奏効持続期間(DOR)中央値はIPd群13.27ヶ月に対してPd群11.07ヶ月、初回奏効までの期間はIPd群35日に対してPd群58日、治療開始から次の治療を開始するまでの期間はIPd群未到達に対してPd群9.1ヶ月(ハザード比:0.538)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はIPd群86.8%に対してPd群70.5%、有害事象(AE)のための治療中止率はIPd群7.2%に対してPd群12.8%、有害事象(AE)のための死亡率はIPd群7.9%に対してPd群9.4%を示した。なお、IPd群におけるインフュージョンリアクション発症率は全グレードで38.2%、グレード3または4で2.6%を示した。
以上のICARIA-MM試験の結果よりPaul Richardson氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対する抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ+ポマリスト+デキサメタゾン併用療法は、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)を改善し、忍容性も問題ありませんでした。”