・進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・維持療法としてのアバスチン単剤、アリムタ単剤、アバスチン+アリムタ併用療法の有効性・安全性を検証
・単剤療法は、併用療法に比べて毒性が低率、全生存期間を改善
2019年7月30日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対する維持療法としてのベバシズマブ（商品名アバスチン;以下アバスチン）単剤、ペメトレキセド（商品名アリムタ;以下アリムタ）単剤、アバスチン+アリムタ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のECOG-ACRIN 5508試験（NCT01107626）の結果がWinship Cancer InstituteのSuresh S. Ramalingam氏らにより公表された。
ECOG-ACRIN 5508試験とは、未治療の進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対してカルボプラチン+パクリタキセル+アバスチン併用療法後の維持療法としてアバスチン単剤療法を投与する群、アリムタ単剤療法を投与する群、またはアバスチン+アリムタ併用療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間（OS）、副次評価項目として無増悪生存期間（PFS）、客観的奏効率（ORR）、安全性などを比較検証した試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
アバスチン単剤群＝65歳
アリムタ単剤群＝63歳
アバスチン+アリムタ併用群＝64歳
喫煙歴
アバスチン単剤群＝現喫煙者45％、前喫煙者45％、喫煙未経験者10％
アリムタ単剤群＝現喫煙者48％、前喫煙者41％、喫煙未経験者11％
アバスチン+アリムタ併用群＝現喫煙者39％、前喫煙者50％、喫煙未経験者11％
がんの組織的分類
アバスチン単剤群＝腺がん91％、大細胞がん 1％未満、NOS 7％
アリムタ単剤群＝腺がん88％、大細胞がん 0％、NOS 10％
アバスチン+アリムタ併用群＝腺がん 91％、大細胞がん 1％、NOS 7％
進行期
アバスチン単剤群＝ステージIIIB 2％、ステージIVM1a 30％、ステージIVM1b 63％、再発 5％
アリムタ単剤群＝ステージIIIB 1％、ステージIVM1a 33％、ステージIVM1b 60％、再発 6％
アバスチン+アリムタ併用群＝ステージIIIB 3％、ステージIVM1a 32％、ステージIVM1b 61％、再発 4％
本試験のフォローアップ期間中央値50.6ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間（OS）中央値はアバスチン単剤群15.9ヶ月、アリムタ単剤群14.4ヶ月に対してアバスチン+アリムタ併用群16.4ヶ月を示した。
副次評価項目である無増悪生存期間（PFS）中央値はアバスチン単剤群4.2ヶ月、アリムタ単剤群5.1ヶ月に対してアバスチン+アリムタ併用群7.5ヶ月を示した。客観的奏効率（ORR）はアバスチン単剤群12.5％（97.5％信頼区間:8.5％-17.6％）、アリムタ単剤群18.7％（97.5％信頼区間:13.9％-24.4％）に対してアバスチン+アリムタ併用群21.2％（97.5％信頼区間:16％-27％）を示した。
一方の安全性として、維持療法フェーズにおけるグレード4または4の治療関連有害事象（TRAE）発症率はアバスチン単剤群30％、アリムタ単剤群38％に対してアバスチン+アリムタ併用群51％を示した。なお、アバスチン単剤群に比べてアリムタ単剤群で多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象（TRAE）は貧血、疲労、リンパ球減少症、好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症。アリムタ単剤群に比べてアバスチン単剤群で多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象（TRAE）は蛋白尿、高血圧。アバスチン単剤群に比べてアバスチン+アリムタ併用群で多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象（TRAE）は貧血、疲労、リンパ球減少症、好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症であった。
以上のECOG-ACRIN 5508試験の結果よりSuresh S. Ramalingam氏らは以下のように結論を述べている。”進行性非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対する維持療法としてのアバスチン単剤療法、アリムタ単剤療法は全生存期間（OS）を改善し、毒性もアバスチン+アリムタ併用療法に比べて低率であるため推奨できる治療方法です。”