・化学療法ナイーブの切除不能悪性胸膜中皮腫患者が対象の第2相試験
・セジラニブ+ペメトレキセド 二ナトリウム+シスプラチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・プラセボ群に対して、無増悪生存期間、客観的奏効率ともに改善
2019年8月6日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて化学療法ナイーブの切除不能悪性胸膜中皮腫患者に対するVEGF受容体阻害薬であるセジラニブ+ペメトレキセド 二ナトリウム+シスプラチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相のSWOG S0905試験(NCT01064648)の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer CenterのAnne S. Tsao氏らにより公表された。
SWOG S0905試験とは、化学療法ナイーブの切除不能悪性胸膜中皮腫患者(N=92人)に対して21日を1サイクルとして1日目にペメトレキセド 二ナトリウム500mg/m2+1日目にシスプラチン75mg/m2+1~21日目に1日1回セジラニブ20mg併用療法を投与する群(N=45人)、または21日を1サイクルとして1日目ペメトレキセド 二ナトリウム500mg/m2+1日目にシスプラチン75mg/m2+1~21日目に1日1回プラセボ併用療法を投与する群(N=47人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した第2相試験である。
本試験が実施された背景として、悪性胸膜中皮腫は予後不良な希少疾患であり、治療選択肢が非常に限られている。悪性胸膜中皮腫の治療として、全身化学療法にVEGF受容体阻害薬の抗腫瘍効果が向上することが期待されている。以上の背景より、経口のVEGF受容体阻害薬であるセジラニブ+化学療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
セジラニブ群=72歳(46-82歳)
プラセボ群=72歳(51-85歳)
性別
セジラニブ群=男性84%
プラセボ群=男性85%
人種
セジラニブ群=白人96%、アフリカ系アメリカ人2%
プラセボ群=白人89%、アフリカ系アメリカ人6%。
Performance Status
セジラニブ群=スコア0-1 93%、スコア2 7%
プラセボ群=スコア0-1 94%、スコア2 6%
放射線療法治療歴あり
セジラニブ群=18%
プラセボ群=19%
術前/術後化学療法治療歴あり
セジラニブ群=13%
プラセボ群=13%
以上の背景を有する患者に対するフォローアップ期間中央値31ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はセジラニブ群7.2ヶ月に対してプラセボ群5.6ヶ月、セジラニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを29%改善した(HR:0.71,80%信頼区間:0.54-0.95,P=0.062)。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はセジラニブ群10.0ヶ月に対してプラセボ群8.5ヶ月、セジラニブ群で死亡(OS)のリスクを12%改善するも統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.88,80%信頼区間:0.65-1.17,P=0.28)。客観的奏効率(ORR)はセジラニブ群50%に対してプラセボ群20%(P=0.006)、セジラニブ群で統計学的有意に高率であった。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はセジラニブ群100%に対してプラセボ群91%(P=0.06)、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はセジラニブ群69%に対してプラセボ群57%(P=0.13)を示した。
プラセボ群に比べてセジラニブ群で高率であった全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は食欲不振51%に対して38%、下痢46.7%に対して17%、鼻血13%に対して0%、筋力低下16%に対して9%、高血圧44%に対して15%、悪心76%に対して66%、末梢神経障害20%に対して11%、体重減少36%に対して21%、骨髄抑制44%に対して30%を示した。
以上のSWOG S0905試験の結果よりAnne S. Tsao氏らは以下のように結論を述べている。”化学療法ナイーブの切除不能悪性胸膜中皮腫患者に対するVEGF受容体阻害薬セジラニブ+ペメトレキセド 二ナトリウム+シスプラチン併用療法は、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)を改善しました。”