・転移性去勢抵抗性前立腺がん患者が対象の第2相試験
・イクスタンジ、ザイティガの治療シークエンス別の有効性を比較検証
・ザイティガ治療後にイクスタンジ治療を開始する方がベネフィットを得る可能性
2019年11月11日、医学誌『The Lancet Oncology』にて転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対するアンドロゲン受容体拮抗薬であるエンザルタミド(商品名イクスタンジ;以下イクスタンジ)、アビラテロン(商品名ザイティガ;以下ザイティガ)の治療シークエンス別の有効性を比較検証する第2相試験(NCT02125357)の結果がConquer Cancer FoundationのDaniel J Khalaf氏らにより公表された。
本試験は、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者(N=202人)に対して1日1回ザイティガ1000mg+1日2回プレドニゾン5mg併用療法をPSA病勢進行するまで投与し、その後1日1回イクスタンジ160mg単剤療法を投与する群(N=101人,グループA)、または1日1回イクスタンジ160mg単剤療法をPSA病勢進行するまで投与し、その後1日1回ザイティガ1000mg+1日2回プレドニゾン5mg併用療法を投与する群(N=101人,グループB)に無作為に振り分け、主要評価項目として2次治療時点におけるPSA病勢進行期間、2次治療時点におけるPSA奏効率(ベースライン時点PSA値より30%の減少として定義)を比較検証したクロスオーバーの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬としてアンドロゲン受容体拮抗薬であるザイティガ、イクスタンジは両剤ともに標準治療である。しかしながら、両剤の内どちらを先行投与するべきか、その治療シークエンスは明らかになっていない。以上の背景より、アンドロゲン受容体拮抗薬の治療シークエンスの有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である2次治療時点におけるPSA病勢進行期間中央値はグループA群19.3ヶ月(95%信頼区間:16.0−30.5ヶ月)に対してグループB群15.2ヶ月(95%信頼区間:11.9−19.8ヶ月)、グループB群に比べてグループA群でPSA病勢進行のリスクを34%統計学的有意に減少した(HR:0.66,95%信頼区間:0.45―0.97,P=0.036)。また、2次治療時点におけるPSA奏効率はグループA群36%(N=26人)に対してグループB群4%を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)は高血圧がグループA群27%に対してグループB群18%、疲労がグループA群10%に対してグループB群4%。また、重篤な有害事象(SAE)発症率はグループA群15%に対してグループB群20%を示したものの、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人の患者も確認されなかった。
以上の第2相試験の結果よりDaniel J Khalaf氏らは以下のように結論を述べている。”転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対するアンドロゲン受容体拮抗薬による治療は、ザイティガ治療後にイクスタンジ治療を開始する方が臨床的ベネフィットを得る可能性が高いことが本試験より示唆されました。”