・2レジメン以上の治療歴のあるプラチナ系抗がん剤抵抗性BRCA1/2遺伝子陽性再発卵巣がん患者が対象の第3相試験
・PARP阻害薬リムパーザ単剤療法の有効性・安全性を非プラチナ系単剤化学療法と比較検証
・客観的奏効率はリムパーザ群で72.2%を示し、病勢進行または死亡のリスクを38%統計学有意に改善
2020年2月19日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて少なくとも2レジメン以上の治療歴のあるプラチナ系抗がん剤抵抗性のあるBRCA1/2遺伝子陽性の再発卵巣がん患者に対するPARP阻害薬であるオラパリブ(商品名リムパーザ;リムパーザ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のSOLO3試験(NCT02282020)の結果がMassachusetts General HospitalのRichard T. Penson氏らにより公表された。
SOLO3試験とは、少なくとも2レジメン以上の治療歴のあるプラチナ系抗がん剤抵抗性のあるBRCA1/2遺伝子陽性の再発卵巣がん患者に対して1日2回リムパーザ300mg単剤療法を投与する群(N=178人)、または主治医選択の非プラチナ系単剤化学療法(ドキソルビシン、パクリタキセル、ゲムシタビン、トポテカン等)を投与する群(N=88人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証したランダム化オープンラベルの第3相試験である。
本試験が開始された背景として、再発卵巣がん患者に対するプラチナ系抗がん剤はファーストライン、セカンドライン治療としては予後を改善する結果を示すが、複数治療歴のある再発卵巣がん患者に対しては臨床的意義が確認されていないため、非プラチナ系単剤化学療法が臨床で使用されている。過去の12の臨床試験結果より、BRCA1/2遺伝子陽性の再発卵巣がん患者に対するリムパーザ単剤療法は、ドキソルビシン単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)が良好であることが示されている。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験に登録された266人の患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
リムパーザ群=59.0歳
非プラチナ系化学療法群=60.0歳
人種
リムパーザ群=白人 83.1%、アジア人 13.5%、その他 3.4%
非プラチナ系化学療法群=白人 85.2%、アジア人 11.4%、その他 3.4%
ECOG Performance Status
リムパーザ群=スコア0 75.8%、スコア1 23.6%、スコア2 0.6%
非プラチナ系化学療法群=スコア0 71.6%、スコア1 28.4%、スコア2 0%。
前治療歴
リムパーザ群で=レジメン 51.7%、3レジメン 23.0%、4レジメン以上 25.3%
非プラチナ系化学療法群=2レジメン 53.4%、3レジメン 27.3%、4レジメン以上 19.3%
BRCA遺伝子変異のステータス
リムパーザ群=BRCA1陽性が67.4%、BRCA2陽性が28.1%
非プラチナ系化学療法群=BRCA1陽性が59.1%、BRCA2陽性が36.4%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はリムパーザ群72.2%(N=109/151人)に対して非プラチナ系化学療法群51.4%(N=37/72人)を示した(オッズ比:2.53,95%信頼区間:1.40-4.58,P=0.002)。また、奏効の内訳はリムパーザ群で完全奏効率(CR)9.3%、部分奏効率(PR)62.9%に対して非プラチナ系化学療法群で完全奏効率(CR)2.8%、部分奏効率(PR)48.6%を示した。また、サブグループ解析の結果、前治療歴2レジメンの患者群における客観的奏効率(ORR)はリムパーザ群84.6%に対して非プラチナ系化学療法群61.5%を示した(オッズ比:3.44,95%信頼区間:1.42-8.54)。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はリムパーザ群13.4ヶ月に対して非プラチナ系化学療法群9.2ヶ月、リムパーザ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを38%(HR:0.62,95%信頼区間:0.43‐0.91,P=0.013)統計学有意に改善した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はリムパーザ群97.8%に対して非プラチナ系化学療法群96.1%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はリムパーザ群50.0%に対して非プラチナ系化学療法群47.4%を示した。なお、リムパーザ群で20%以上の患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は吐き気64.6%、倦怠感52.2%、貧血51.1%、嘔吐38.2%、下痢28.1%、好中球減少症23.0%、腹痛21.3%であった。また、5%以上の患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は貧血21.3%、好中球減少症9.6%であった。
以上のSOLO3試験の結果よりRichard T. Penson氏らは以下のように結論を述べている。”少なくとも2レジメン以上の治療歴のあるプラチナ系抗がん剤抵抗性のあるBRCA1/2遺伝子陽性の再発卵巣がん患者に対するPARP阻害薬リムパーザ単剤療法は、非プラチナ系化学療法に比べて客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。”