・母乳育児と卵巣がん発症リスクの関連性を検証した試験
・母乳育児の有無、期間などにより卵巣がんの発症リスクが変化するかどうかを検証
・母乳育児は出産回数に関係なく浸潤性卵巣がんのリスクを低下させることが示唆
2020年4月2日、医学誌『JAMA Oncology』にて母乳育児と卵巣がん発症リスクの関連性を検証した試験の結果がBrigham and Women’s HospitalのAna Babic氏らにより公表された。
本試験は、9973人の卵巣がん患者群、13843人のコントロール群が登録された13の臨床試験を対象にして、主要評価項目として母乳育児の有無、期間、時期により卵巣がんの発症リスクは変化するかどうかを検証したプール解析の結果である。
本試験が開始された背景として、卵巣がんの5年生存率(OS)は50%未満であり、予後不良である。この予後不良の主な原因としては早期発見の遅れであり、死亡率を減少させるためにの予防法を確立することが重要である。しかしながら、現在の予防法としては経口避妊薬の服用以外にリスク関連因子が特定できていないため、効果的な予防法がない。以上の背景より、母乳育児と卵巣がん発症リスクの関連性を検証する試験が開始された。
本試験の結果、母乳育児群は浸潤性卵巣がん発症のリスクを24%(OR:0.76,95%信頼区間:0.71-0.80)低下させた。そして、母乳育児は出産回数に関係なく浸潤性卵巣がん、特に高悪性度の漿液性/類内膜がんのリスクを低下させることが示された。また、母乳期間による卵巣がん発症リスクは、平均1~3ヶ月の母乳期間群で18%低下(OR:0.82,95%信頼区間:0.76-0.88)、12ヶ月以上の母乳期間群で34%低下(OR:0.66,95%信頼区間:0.58-0.75)した。
以上のプール解析の結果よりAna Babic氏らは以下のように結論を述べている。”母乳育児は卵巣がん発症のリスクを低下させる、妊娠とは独立した因子でした。また、最も致死的なタイプの卵巣がんである高悪性度漿液がんに対してもその関連性は同等でした。”