6月5日、中外製薬株式会社(以下中外製薬)は、包括的ながん関連遺伝子解析システム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(以下FoundationOne)」が、厚生労働省にポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるリムパーザ (一般名:オラパリブ 以下リムパーザ)の相同組換え修復(HRR: homologous recombination repair)関連遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC:metastatic castration-resistant prostate cancer)を対象にした、コンパニオン診断機能の追加を申請したと発表した。
ホルモン療法に抵抗性を示すmCRPCにおいて、多くの新規治療法が検討されている中、遺伝子変異に基づいた治療法は今後の重要な選択肢の一つと位置付けられていた。
今回の申請は、mCRPCを対象にリムパーザの有効性と安全性を評価した第3相PROfound試験の結果を基に検討された。前治療であるイクスタンジ(一般名:エンザルタミド)またはザイティガ(一般名:アビラテロン酢酸エステル)の投与後に病勢進行したHRR関連遺伝子変異陽性mCRPC患者を対象に、FoundationOneを用いて複数のHRR関連遺伝子変異を同時に検出することで、リムパーザの適応判定の補助となるのが目的である。
中外製薬代表取締役社長の奥田修は「HRRに関連する複数の遺伝子が同定されており、患者さんの遺伝子変異の状況を包括的に把握可能なFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルが、オラパリブの適応判定補助に有用なツールとして貢献できるものと信じています」と述べている。
FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルとは
次世代シークエンサーを用いた包括的な遺伝子変異解析プログラム。米国のファウンデーション・メディシン社が開発した。固形がん組織から得られたDNAを用いて、324の遺伝子における置換、挿入、欠失、コピー数異常および再編成などの変異などの検出や解析、ならびにバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性(Microsatellite Instability: MSI)の判定や腫瘍の遺伝子変異量(Tumor Mutational Burden: TMB)の算出を行う。また、国内既承認の複数の分子標的薬のコンパニオン診断として、適応判定の補助に用いられている。
リムパーザについて
リムパーザはファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復の欠損を有する細胞または腫瘍におけるDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬。リムパーザによるPARP阻害はDNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させる。
参照:アストラゼネカ株式会社 プレスリリース
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)とは
前立腺がんは男性において2番目に罹患率が高く、死亡率も高いがん腫。多くの場合、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンにより発症する。男性ホルモンの作用を阻害するアンドロゲン除去療法を行ったにもかかわらず、前立腺がんが増殖し、他の部位に転移したものをmCRPCと呼ぶ。進行前立腺がんの約10~20%は5年以内に去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へと進行し、そのうち84%以上はCRPC診断時に転移が認められる。mCRPCに対する治療選択肢は増えているが、依然として5年生存率は低く、生存期間の延長が期待される。
参照:アストラゼネカ株式会社 プレスリリース
相同組換え修復(HRR)遺伝子とは
HRR遺伝子は正常細胞における損傷後のDNAの正確な修復に関与している。そのため、HRRが欠損するとDNAが修復されず、正常細胞の死に至る。しかし、がん細胞ではHRR経路の変異が起こり、異常な細胞を増殖させがんの発症、増殖を招く。HRR遺伝子変異は、mCRPC患者の約20~30%に発現する。
参照:アストラゼネカ株式会社 プレスリリース
参照元:
中外製薬株式会社 プレスリリース