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タグリッソがEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの術後補助療法として無病生存期間を改善

この記事の3つのポイント
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・EGFR阻害薬タグリッソ単剤療法の術後補助療法としての有効性安全性を比較検証
・タグリッソ群の2年無病生存率は90%で、病勢進行または死亡のリスクは83%減少

2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にてEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後補助療法としての第3世代不可逆的EGFR阻害薬であるオシメルチニブ(商品名タグリッソ 以下タグリッソ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のADAURA試験(NCT02511106)の結果がYale School of Medicine and Yale Cancer CenterのRoy S. Herbst氏らにより公表された。

ADAURA試験とは、EGFR遺伝子変異陽性のステージIB/II/IIIA期非小細胞肺がん患者(N=682人)に術後補助療法として1日1回タグリッソ80mg単剤療法を最大3年間投与する群(N=339人)とプラセボ単剤療法を投与する群(N=343人)を1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存期間DFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、安全性などを比較検証した国際共同試験である。

非小細胞肺がん患者の約30%はステージI~IIIAであり、現在の標準治療は手術とされている。中でもステージIB~IIIの患者には術後化学療法が実施される。しかし、現在の標準治療での再発率は高く、新しい治療方法を開発する必要がある。そのため、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象に術後補助療法としてのタグリッソ単剤療法の有用性を検証する目的でADAURA試験が開始された。

本試験の結果、主要評価項目である無病生存期間(DFS)は下記の通りである。ステージII~IIIA患者群における2年無病生存率(DFS)はタグリッソ群90%に対してプラセボ群44%、タグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを83%(HR:0.17,95%信頼区間:0.12-0.23,P<0.0001)統計学的有意に改善した。また、ステージIBも含めた全患者群における2年無病生存率(DFS)はタグリッソ群89%に対してプラセボ群53%、タグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを79%(HR:0.21,95%信頼区間:0.16-0.28,P<0.0001)統計学的有意に改善した。

副次評価項目である全生存期間(OS)は、死亡(OS)イベント29件(タグリッソ群9件、プラセボ群20件)時点では両群ともに未到達であった。一方の安全性は、既存の臨床試験で確認されているタグリッソの安全性プロファイルと一致しており、本試験で新たに確認された有害事象(AE)はなかった。

ADAURA試験の結果よりRoy S. Herbst氏らは「EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後補助療法としてのタグリッソ単剤療法は、プラセボに比べて無病生存期間(DFS)を統計学有意に改善しました。術後補助療法としてのタグリッソは、本患者の新しい治療選択肢になり得る可能性が本試験により示唆されました」と述べている。

Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with stage IB–IIIA EGFR mutation positive (EGFRm) NSCLC after complete tumor resection: ADAURA.(2020 ASCO Virtual Scientific Program,Abstract No:LBA5)

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