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慢性リンパ性白血病に対してCalquence(アカラブルチニブ)が欧州医薬品評価委員会より製造販売承認を取得

7月27日、英アストラゼネカ社は、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療薬として、選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であるCalquence(一般名アカラブルチニブ、以下Calquence)が欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)より製造販売承認を取得したと発表した。

CLLは成人の白血病のうち患者数が最も多い疾患であり、患者数は治療の発展に伴い増加すると見込まれている。CLLは骨髄中の過剰な造血幹細胞が異常なリンパ球となり、異常細胞が増えることで健常な血球および血小板が減少するため、貧血、感染、出血などを引き起こす。

今回の承認は、第3相のELEVATE-TN試験とASCEND試験の2つの結果に基づいている。ELEVATE-TN試験は前治療歴のないCLL患者にCalquenceと抗CD20モノクローナル抗体であるオビヌツズマブの併用またはCalquence単剤投与した群と標準的な化学免疫療法であるchlorambucilとオビヌツズマブの併用療法群に分け、有効性安全性を比較検討した試験。病勢進行または死亡のリスクをそれぞれ標準免疫療法と比較し、Calquenceとオビヌツズマブの併用療法は90%、Calquence単剤療法は80%低下を示した。

ASCEND試験は前治療歴のあるCLL患者にCalquence単剤投与群とCD20モノクローナル抗体であるリツキシマブとPI3K阻害剤であるidelalisibとの併用療法もしくはリツキシマブとベンダムスチンとの併用療法のいずれかを投与する群に割り付け、有効性と安全性を比較検討した試験。12ヶ月時点での生存かつ病勢進行が認められなかった患者はCalquence群では88%であった。

以上の2つの結果より、今回、Calquenceの前治療歴のない成人CLL患者に対するCalquence単剤もしくはオビヌツズマブとの併用療法と少なくとも1回の前治療歴のある成人CLL患者に対する単剤療法に対して承認勧告が行われた。

アストラゼネカのオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselgaは「優れた有効性と忍容性プロファイルを有するアカラブルチニブは、高齢かつ複数の合併症を有し、さらには長期間の治療を必要とすることが多い慢性リンパ性白血病患者さんに大きな利益をもたらします。今回の肯定的な勧告により、この慢性血液腫瘍に罹患している欧州の患者さんが強く待ち望んでいた新たな治療選択肢の提供に近づきました」と述べている。

アカラブルチニブは、成人のCLLの治療薬としての他、少なくとも1回の治療歴を有する成人マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬として、米国をはじめその他数か国で承認されているが、欧州ではMCLに対しては未承認である。なお、日本においても未承認である。

アカラブルチニブ(Calquence)について
次世代の選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であり、BTKに共有結合することでその阻害作用を発揮する。BTKシグナルはB細胞内で、B細胞の増殖、輸送、走化、接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こす。米国など数か国で、成人CLL患者の治療薬として、および少なくとも1回の前治療歴のある成人のマントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬として承認を受けている。CLL、MCL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、およびその他の血液悪性腫瘍を含む複数のB細胞性の血液がんの治療薬として開発中である。

ELEVATE-TN試験について
前治療歴のないCLL患者を対象に、Calquence+オビヌツズマブ、Calquence単剤、chlorambucil+オビヌツズマブの併用療法の3群に535人を1対1対1で割り付けた無作為化多施設共同非盲検第3相試験。患者は65歳以上または18歳以上65歳未満で併存疾患指数(CIRS)が6未満、あるいはクレアチニンクリアランスが30~69ml/分を対象とした。なお、Calquenceは病勢進行または許容できない毒性が現れるまで約12時間ごとに100mgを投与を行った。
主要評価項目は、無増悪期間PFS)、副次的評価項目は、客観的奏効率、次治療までの期間、全生存期間とした。

ASCEND試験について
前治療歴のあるCLL患者310人を対象に、Calquence単剤を病勢進行または許容できない毒性が現れるまで100mgを1日2回投与する群と治験担当医師の選択により、CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブとPI3K阻害薬であるidelalisibとの併用療法、またはリツキシマブと化学療法であるベンダムスチンとの併用療法を行う群に1対1で割り付け主要評価項目はPFS、副次評価項目は全奏効率および奏効期間、ならびに全生存期間、患者が報告したアウトカム、および次治療までの期間とした。

参照元:
アストラゼネカ株式会社 プレスリリース

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