・治療歴のあるHER2陽性ホルモン受容体陽性の閉経後転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・タイケルブ+ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間はハーセプチン+アロマターゼ阻害薬併用群5.6ヶ月に対し、11.0ヶ月で統計学的有意に延長
2020年8月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のあるHER2陽性ホルモン受容体陽性の閉経後転移性乳がん患者に対するチロシンキナーゼ阻害薬であるタイケイブ(一般名:ラパチニブ、以下タイケルブ)+抗HER2抗体薬であるハーセプチン(一般名:トラスツズマブ、以下ハーセプチン)+アロマターゼ阻害薬(AI)併用療法の有効性を比較検証した第3相のALTERNATIVE試験の結果がThe Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. D. Johnston氏らにより公表された。
ALTERNATIVE試験とは、治療歴のあるHER2陽性ホルモン受容体陽性の閉経後転移性乳がん患者(N=355人)に対してタイケルブ+ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用療法を投与する群(N=120人)、ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用療法を投与する群(N=117人)、タイケルブ+アロマターゼ阻害薬(AI)併用療法を投与する群(N=118人)に1:1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目である主治医評価によるハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)に対するタイケルブ+ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、臨床的有用率(CBR)などを比較検証した多施設共同の第3相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタイケルブ+ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群11.0ヶ月に対してハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群5.6ヶ月、タイケルブ+ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを38%(HR:0.62、95%信頼区間:0.45-0.88、P=0.0063)統計学的有意に減少した。
また、無増悪生存期間(PFS)中央値はタイケルブ+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群8.3ヶ月に対してハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群5.6ヶ月、タイケルブ+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを15%(HR:0.85、95%信頼区間:0.62-1.17、P=0.3159)減少した。
一方の安全性として、15%以上の患者で確認された有害事象(AE)はタイケルブ+ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群、ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群、タイケルブ+アロマターゼ阻害薬(AI)併用群でそれぞれ下記の通りである。下痢は69%、9%、51%、皮膚障害は36%、2%、28%、吐き気は22%、9%、22%、爪囲炎は30%、0%、15%を示した。
以上のALTERNATIVE試験の結果よりStephen R. D. Johnston氏らは「治療歴のあるHER2陽性ホルモン受容体陽性の閉経後転移性乳がん患者に対するチロシンキナーゼ阻害薬タイケルブ+抗HER2抗体薬ハーセプチン+アロマターゼ阻害薬(AI)併用療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善し、本患者の代替治療になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。