・BRCA1/2遺伝子変異陽性HER2陰性進行性乳がん患者が対象の第3相試験
・ベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間14.5ヶ月でプラセボ群に対し有意に延長、死亡リスクを29%減少
2020年8月27日、医学誌『The Lancet Oncology』にてBRCA遺伝子変異陽性の進行性乳がん患者に対するPARP阻害薬であるベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のBROCADE3試験(NCT02163694)の結果がCentre Eugène MarquisのVéronique Diéras氏らにより公表された。
BROCADE3試験とは、BRCA1/2遺伝子変異陽性HER2陰性の進行性乳がん患者(N=509人)に対して21日を1サイクルとして2~5日目に1日2回ベリパリブ120mg+1日目にカルボプラチン(AUC6)+1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2 併用療法を投与する群(N=337人)、または21日を1サイクルとしてプラセボ+1日目にカルボプラチン(AUC6)+1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2 併用療法を投与する群(N=172人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した国際多施設共同二重盲検下プラセボ対照の第3相試験である。
なお、病勢進行前にカルボプラチン+パクリタキセル併用療法を治療する場合、1日2回ベリパリブ300~400mgまたはプラセボ単剤療法で治療を継続する。
BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性乳がんはDNA損傷の相同組換え修復の欠陥により、PARP阻害薬に対して高い抗腫瘍効果を示すことが明らかになっている。以上の背景より、PARP阻害薬であるベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法の有用性と病勢進行前にカルボプラチンおよびパクリタキセルを中止した場合のベリパリブ単剤療法の有用性が本試験にて検証された。
本試験のフォローアップ期間中央値は、ベリパリブ群35.7ヶ月、プラセボ群35.5ヶ月であり、その時点での主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、ベリパリブ群14.5ヶ月(95%信頼区間:12.5-17.7ヶ月)に対してプラセボ群12.6ヶ月(95%信頼区間:10.6-14.4ヶ月)、ベリパリブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを29%(HR:0.71、95%信頼区間:0.57-0.88、P=0.0016)統計学的有意に改善した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は下記の通りである。好中球減少症がベリパリブ群81%に対してプラセボ群84%、貧血がベリパリブ群42%に対してプラセボ群40%、血小板減少症がベリパリブ群40%に対してプラセボ群28%。重篤な有害事象(SAE)発症率はベリパリブ群34%に対してプラセボ群29%、なお治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人も確認されなかった。
BROCADE3試験の結果よりVéronique Diéras氏らは「BRCA1/2遺伝子変異陽性HER2陰性の進行性乳がん患者さんに対するPARP阻害薬ベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法は、仮にカルボプラチン+パクリタキセル併用療法の治療中止した場合でも無増悪生存期間(PFS)を改善しました。プラチナ製剤とPARP阻害剤を併用することの有用性を示しました」と結論を述べている。