・手術可能なトリプルネガティブ乳がん患者が対象の第3相試験
・パクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・5年無病生存率は86.5%で、標準療法80.3%に対し、死亡リスクを35%減少した
2020年8月13日、医学誌『JAMA Onocology』にて手術可能なトリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としてのパクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性、安全性を検証した第3相試験(NCT01216111)の結果がFudan University Shanghai Cancer CenterのKe-Da Yu氏ら公表された。
本試験は、手術可能なトリプルネガティブ乳がん患者(N=647人)に対する術前化学療法として28日を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2+カルボプラチン(AUC2)併用療法を6サイクル投与する群(PCb、N=325人)、または標準療法である3週を1サイクルとしてシクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン100mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2併用療法を3サイクル投与し、3週を1サイクルとしてドセタキセル100mg/m2単剤療法を3サイクル投与する群(CEF-T、N=322人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存期間 (DFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、無再発生存期間(RFS)などを比較検証した。
本試験のフォローアップ期間中央値62ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である5年無病生存率(DFS)はPCb群86.5%に対してCEF-T群80.3%、パクリタキセル+カルボプラチン併用群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを35%減少(HR:0.65、95%信頼区間:0.44-0.96、P=0.03)した。
一方、副次評価項目である全生存期間(OS)はパクリタキセル+カルボプラチン併用群で死亡(OS)のリスクを29%減少(HR:0.71、95%信頼区間:0.42-1.22、P=0.22)するも統計学的有意な差は確認されなかった。
サブグループ解析の結果、BRCA1/2遺伝子バリアントを有する患者群における無病生存期間 (DFS)はパクリタキセル+カルボプラチン併用群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを56%減少(HR:0.44、95%信頼区間:0.15-1.31、P=0.14)。相同組換え修復(HRR)バリアントを有する患者群における無病生存期間 (DFS)はパクリタキセル+カルボプラチン併用群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを61%減少(HR:0.39、95%信頼区間:0.15-0.99、P=0.04)した。
以上の第3相試験の結果よりKe-Da Yu氏らは「手術可能なトリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としてのパクリタキセル+カルボプラチン併用療法は、現在の標準治療の代替治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。