・治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・ベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間を統計学有意に改善した一方で、重篤な感染症の増加も確認
2020年10月29日、医学誌『The Lancet Oncology』にて治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対する経口BCL-2阻害薬であるベネクレクスタ(一般名:ベネトクラクス、以下ベネクレクスタ)+プロテアソーム阻害薬であるベルケイド(一般名:ボルテゾミブ、以下ベルケイド)+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT02755597)の結果がMayo ClinicのShaji K Kumar氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=291人)に対して21日を1サイクルとして1日1回ベネクレクスタ800mg+ベルケイド1.3mg/m2+1回デキサメタゾン20mg併用療法を8サイクル、35日を1サイクルとして1日1回ベネクレクスタ800mg+ベルケイド1.3mg/m2+1回デキサメタゾン20mg併用療法を9サイクル目以降投与する群(N=194人)、または21日を1サイクルとして1日1回プラセボ+ベルケイド1.3mg/m2+1回デキサメタゾン20mg併用療法を8サイクル、35日を1サイクルとして1日1回プラセボ+ベルケイド1.3mg/m2+1回デキサメタゾン20mg併用療法を9サイクル目以降投与する群(N=97人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として独立判定機関評価による無増悪生存期間(PFS)を比較検証した国際多施設共同ランダム二重盲検下の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、選択的BCL-2阻害薬であるベネクレクスタは多発性骨髄腫細胞のアポトーシスを誘導する薬剤である。第1相試験により、ベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法は良好な抗腫瘍効果と安全性を示している。以上の背景より、治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫に対するベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の患者の前治療歴は1~3回であった。フォローアップ期間中央値18.7ヵ月時点における主要評価項目としての独立判定機関評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群22.4ヵ月(95%信頼区間:15.3ヵ月~未到達)に対してプラセボ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群11.5ヵ月(95%信頼区間:9.6~15.0ヵ月)、ベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを37%減少(HR:0.63、95%信頼区間:0.44~0.90、P=0.010)した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。好中球減少症でベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群18%に対してプラセボ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群7%、肺炎で16%に対して9%、血小板減少症で15%に対して30%、貧血で15%に対して15%、下痢で15%に対して11%の患者で有害事象(AE)の発現が確認された。
重篤な有害事象(SAE)発症率はベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群48%に対してプラセボ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群50%、特にベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群で重篤な感染症が4%の患者で確認された。また、ベネクレクスタ+ベルケイド+デキサメタゾン併用群で3人の患者の死亡が確認され、その原因は肺炎2人、敗血症性ショック1人であった。
以上の第3相試験の結果よりShaji K Kumar氏らは「治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対する経口BCL-2阻害薬ベネクレクスタ+プロテアソーム阻害薬ベルケイド+デキサメタゾン併用療法は、独立判定機関評価による無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善し、主要評価項目を達成しました。しかしながら、重篤な感染症の増加により死亡率が高くなることも確認されましたので、本治療を選択する時の患者選択は重要です」と結論を述べている。