抗PD-L1抗体イミフィンジが、2018年7月2日に承認取得したことを受け、アストラゼネカは7月23日に記者発表会を開いた。
講演では近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門の中川 和彦教授が、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)の意義について述べられた。
切除不能ステージⅢ期は、同時化学放射線療法が標準治療であり、目的は根治を目指したものである。しかし患者の89%は治療後に病勢が進行し、転移する。Ⅲ期の5年生存率は15-20%と高くない。また革新的な新薬が相次ぐステージⅣ期とは対照的に、過去20年間標準治療には進展がなかった。
イミフィンジはステージⅢ期で標準治療の抗がん剤と放射線療法を組み合わせた併用療法後の維持療法が適応である。承認取得の根拠となった国際共同臨床第3相試験 PACIFIC 試験で主要評価項目のひとつである無増悪生存期間を有意に延長させた。イミフィンジ投与群が中央値で16.8ヶ月、プラセボ群5.6ヶ月で、11ヶ月以上の延長。再発・再燃リスクを48% 減少させた。
2018年秋に開催される国際学会では全生存期間の結果が発表となる予定で、期待できると述べた。
さらに中川教授は、治癒率が大きく改善したのは、Ⅲ期はⅣ期より腫瘍ボリュームが少ない状況、化学放射線療法によってさらに腫瘍ボリュームが減少、腫瘍周辺に活性化T細胞が増加、PD-L1発現が亢進していると推測し、イミフィンジが効きやすい環境が整っているとした。
安全性については、免疫介在性有害事象のひとつで肺臓炎と放射線性肺臓炎が低頻度ではあるが報告があり、注意が必要と付け加えた。
今後の展望として、イミフィンジ以外のPD-1抗体・PD-L1抗体がステージⅢ期の臨床開発を行っており、さらに術後補助療法においても猛烈な開発競争が繰り広げられていると説明した。