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胃がんの家族歴があるヘリコバクターピロリ感染者、除菌成功で胃がん発症リスクを73%低下

この記事の3つのポイント
・親子や兄弟に胃がんの家族歴があるヘリコバクターピロリ陽性患者が対象の第3相試験
・ヘリコバクターピロリ除菌の有効性を検証
・ヘリコバクターピロリ除菌成功群で胃がんの発症リスクを73%低下させた

2020年1月30日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて第一度近親者(親子、兄弟)に胃がんの家族歴のあるヘリコバクターピロリ陽性患者に対するヘリコバクターピロリ除菌の有効性を検証した第3相試験(NCT01678027)の結果がNational Cancer Center KoreaのIl Ju Choi氏らにより公表された。

本試験は、第一度近親者に胃がんの家族歴のある3100人をスクリーニングにし、その内ヘリコバクターピロリ感染者1838人に対して1日2回ランソプラゾール30mg+アモキシシリン1000mg+クラリスロマイシン500mgを7日間連続投与するヘリコバクターピロリ除菌群(N=832人)、またはプラセボ療法を投与する群(N=844人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として胃がん発症リスクを比較検証した単一施設二重盲検プラセボ対照試験である。

本試験が開始された背景として、ヘリコバクターピロリ感染、胃がんの家族歴は胃がん発症のリスクファクターである。しかしながら、第一度近親者に胃がんの家族歴のある人の胃がんリスクをヘリコバクターピロリ除菌により低下させられるかどうかは臨床試験により明らかになっていない。以上の背景より、本試験が開始された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はヘリコバクターピロリ除菌群48.8±6.0歳に対してプラセボ療法群48.8±6.3歳。性別はヘリコバクターピロリ除菌群で男性49.9%に対してプラセボ療法群49.1%。

喫煙歴はヘリコバクターピロリ除菌群であり43.9%に対してプラセボ療法群であり41.0%。アルコール歴はヘリコバクターピロリ除菌群であり67.6%に対してプラセボ療法群であり67.1%。胃がんの家族歴はヘリコバクターピロリ除菌群で父38.4%、母27.0%、兄弟46.3%に対してプラセボ療法群で父36.5%、母27.3%、兄弟46.6%。

以上の背景を有する患者における本試験のフォローアップ期間中央値9.2年時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である胃がん発症率はヘリコバクターピロリ除菌群1.2%(N=10人)に対してプラセボ療法群2.7%(N=23人)、ヘリコバクターピロリ除菌群で胃がんの発症リスクを55%低下(HR:0.45,95%信頼区間:0.21~0.94,P=0.03)させた。

なお、ヘリコバクターピロリ除菌群の中で胃がんを発症した10人の内5人(50.0%でヘリコバクターピロリの持続的感染が確認されている。つまり、ヘリコバクターピロリ感染別の胃がん発症率はヘリコバクターピロリ除菌成功群0.8%(5/608人)に対してヘリコバクターピロリ除菌失敗または非除菌群2.9%(28/979人)、ヘリコバクターピロリ除菌成功群で胃がんの発症リスクを73%低下(HR:0.27,95%信頼区間:0.10~0.70)させた。

一方の安全性として、全グレード有害事象(AE)発症率はヘリコバクターピロリ除菌群53.0%に対してプラセボ療法群19.1%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はヘリコバクターピロリ除菌成功群0.8%に対してプラセボ療法群0.1%を示した。また、プラセボ療法群に比べてヘリコバクターピロリ除菌群で多くの患者に確認された全グレードの有害事象(AE)は味覚異常32.3%、下痢22.3%、腹痛4.6%であった。

以上の試験の結果よりIl Ju Choi氏らは以下のように結論を述べている。”第一度近親者に胃がんの家族歴のあるヘリコバクターピロリ陽性患者に対するヘリコバクターピロリ除菌療法は、胃がん発症リスクを統計学有意に低下させることが示されました。”

Family History of Gastric Cancer and Helicobacter pylori Treatment(N Engl J Med. 2020 Jan 30;382(5):427-436. doi: 10.1056/NEJMoa1909666.)

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