・転移性去勢抵抗性前立腺がん患者が対象の第2相試験
・カピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・複合無増悪生存期間はカピバセルチブ群で7.03ヵ月、プラセボ群で6.70ヵ月だったが統計学的有意に延長せず
2020年12月16日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対するドセタキセル+プレドニゾロン+AKT阻害薬であるカピバセルチブ併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のProCAID試験(NCT02121639)の結果がUniversity of SouthamptonのSimon J. Crabb氏らにより公表された。
ProCAID試験とは、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者(N=150人)に対して21日を1サイクルとしてAKT阻害薬である1日2回カピバセルチブ320mg(4日間投与し、3日間休薬する)+1日目にドセタキセル75mg/m2+1~21日目に1日2回プレドニゾロン5mg+併用療法群、またはプラセボ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用療法群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として複合無増悪生存期間(cPFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証したプラセボ対照ランダム化の第2相試験である。なお、PI3K/AKT/PTEN経路のバイオマーカーごとのサブグループでも解析された。
本試験が開始された背景として、転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するドセタキセル単剤療法は全生存期間(OS)をはじめ良好な抗腫瘍効果を示している。しかしながら、ドセタキセルに対する代替療法、併用療法の有用性は臨床試験にて確立されていない。そこで、基礎試験にて転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するドセタキセル+AKT阻害薬カピバセルチブ併用療法が相乗的な抗腫瘍効果を示したことより、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対するドセタキセル+プレドニゾロン+AKT阻害薬カピバセルチブ併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である複合無増悪生存期間(cPFS)中央値はカピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群の7.03ヵ月(95%信頼区間:6.28-8.25ヵ月)に対してプラセボ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群は6.70ヵ月(95%信頼区間:5.52-7.36ヵ月)で、カピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群で複合無増悪生存(cPFS)のリスクが8%減少(HR:0.92、80%信頼区間:0.73-1.16、P=0.32)した。
また、全生存期間(OS)中央値はカピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群の31.15ヵ月(95%信頼区間:20.07ヵ月-未到達)に対してプラセボ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群で20.27ヵ月(95%信頼区間:17.51-24.18ヵ月)と、カピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群で死亡(OS)のリスクが46%減少(HR:0.54、80%信頼区間:0.34-0.88、P=0.01)した。
なお、複合無増悪生存期間(cPFS)、全生存期間(OS)ともにPI3K/AKT/PTEN経路のステータスに関係なく、同様の結果を示していた。一方の安全性として、グレード3~4の有害事象(AE)発症率は両群間62.2%を示し、カピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用群で最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は下痢、疲労、吐き気、皮膚障害であった。
以上のProCAID試験の結果よりSimon J. Crabb氏らは「転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対するAKT阻害薬カピバセルチブ+ドセタキセル+プレドニゾロン併用療法は、複合無増悪生存期間(cPFS)を統計学有意に改善しませんでした。一方、全生存期間(OS)においては改善傾向が確認されておりますので、さらなる検証が必要になるでしょう」と結論を述べている。