・VEGFR阻害薬治療歴のある放射性ヨウ素治療不応性の分化型甲状腺がん患者が対象の第3相試験
・カボメティクス単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間は未到達であり、プラセボ群の1.9ヶ月に対して統計学的有意に延長を示した
2021年7月5日、医学誌『The Lancet Oncology』にて血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬治療歴のある放射性ヨウ素治療不応性の分化型甲状腺がん患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるカボメティクス(一般名:カボザンチニブ、以下カボメティクス)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT03690388)の結果がUniversity of PennsylvaniaのMarcia S Brose氏らにより公表された。
本試験は、レンバチニブ、ソラフェニブをはじめとした血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬治療歴のある放射性ヨウ素治療不応性の分化型甲状腺がん患者に対して1日1回カボメティクス60mg単剤を投与する群(N=125人)、もしくはプラセボを投与する群(N=62人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立審査委員会(BIRC)判定により客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)を比較検証した国際多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照の第3相試験である。
本試験の結果は下記の通りである。フォローアップ期間中央値8.9ヶ月(7.1~10.5ヶ月)時点における主要評価項目である盲検下独立審査委員会(BIRC)判定により客観的奏効率(ORR)はカボメティクス単剤群の15%(99%信頼区間:5.8~29.3%)に対してプラセボ群で0%(99%信頼区間:0~14.8%)と、プラセボ群に比べてカボメティクス単剤群で高率であったが、事前に設定した優越性の基準値を超える結果ではなかった。
フォローアップ期間中央値6.2ヶ月(3.4~9.2ヶ月)時点における主要評価項目である盲検下独立審査委員会(BIRC)判定により無増悪生存期間(PFS)はカボメティクス単剤群の未到達(96%信頼区間:5.7ヶ月~未到達)に対してプラセボ群で1.9ヶ月(96%信頼区間:1.8~3.6ヶ月)と、プラセボ群に比べてカボメティクス単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを78%減少(96%信頼区間:0.13~0.36、P<0.0001)を示した。
一方の安全性として、グレード3~4の有害事象(AE)発症率はカボメティクス単剤群の57%(N=71/125人)に対してプラセボ群で26%(N=16/62人)を示した。最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は、手足症候群手足症候群がカボメティクス単剤群の10%に対してプラセボ群で0%、高血圧が9%(N=11人)に対して3%(N=2人)、疲労が8%に対して0%を示した。重篤な有害事象(AE)発症率はカボメティクス単剤群の16%(N=20人)に対してプラセボ群で2%(N=1人)を示した。
以上の第3相試験の結果よりMarcia S Brose氏らは以下のように結論を述べている。「血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬治療歴のある放射性ヨウ素治療不応性の分化型甲状腺がん患者に対するマルチキナーゼ阻害薬カボメティクス単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。本治療は、標準治療選択肢のない分化型甲状腺がん患者に対する新しい治療選択肢になり得るでしょう」と結論を述べている。