・一次治療後に病勢進行したPI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する進行性胃がん患者が対象の第1b/2相試験
・パクリタキセル+PI3Kβ選択的阻害薬GSK2636771併用療法の有効性・安全性を検証
・第2相推奨用量はパクリタキセル80mg/m2+GSK2636771 200mgに決定し、その無増悪生存期間は12.1週を示した
2021年6月31日~7月3日、欧州臨床腫瘍学会世界消化器癌会議(ESMO 23rd World Congress on Gastrointestinal Cancer)にて一次治療後に病勢進行したPI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する進行性胃がん患者に対するパクリタキセル+PI3Kβ選択的経口阻害薬であるGSK2636771併用療法の有効性、安全性を検証した第1b/2相試験(NCT02615730)の結果がYonsei Cancer CenterのM. Jung氏らにより公表された。
本試験は、一次治療後に病勢進行したPI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する進行性胃がん患者に対して28日を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセルを80mg/m2+1日1回GSK2636771 を200mgまたは300mg併用投与し、主要評価項目として第2相試験推奨用量(RP2D)と無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性などを検証した多施設共同第1b/2相試験である。
本試験が開始された背景として、PI3K/AKT経路活性化に伴うPTENの欠損は、一般的に胃がんで確認される。PI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する進行性胃がん患者に対するPI3Kβ選択的経口阻害薬であるGSK2636771はパクリタキセルとの併用により抗腫瘍効果が期待されている。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験に登録された42人の年齢中央値59歳(32~88歳)、男性が34人。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
第1b相段階にて、GSK2636771を300mg投与した5人の内2人の患者でグレード3の低カルシウム血症の発現が確認された。主要評価項目である第2相試験推奨用量(RP2D)は28日を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセルを80mg/m2+1日1回GSK2636771を 200mg投与すると決定された。
第2相試験推奨用量(RP2D)の患者群37人における、無増悪生存期間(PFS)中央値は12.1週(95%信頼区間:11.1-13.2週)、全生存期間(OS)中央値は33.4週(95%信頼区間:26.2-40.7週)をそれぞれ示した。また、測定可能な病変を有する患者における客観的奏効率(ORR)は17.9%(N=5/28人)、病勢コントロール率は(DCR)67.9%をそれぞれ示した。
最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は好中球減少症38.1%、末梢神経障害28.8%、食欲不振21.4%、下痢16.7%、筋肉痛14.3%を示した。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡、予期せぬ有害事象(AE)の発現は確認されなかった。
以上の第1b/2相試験の結果よりM. Jung氏らは「一次治療後に病勢進行したPI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する進行性胃がん患者に対するパクリタキセル+PI3Kβ選択的経口阻害薬GSK2636771併用療法は良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。