・進行性肝細胞がん患者が対象の第3相試験
・ファーストライン治療としてカボメティクス+テセントリク併用療法の有効性・安全性をソラフェニブ単剤と比較検証
・無増悪生存期間は6.8ヶ月であり、ソラフェニブ単剤(4.2ヶ月)に対して統計学的有意に延長を認めた
2021年11月20日、医学誌『Annals of Oncology』にて進行性肝細胞がん患者に対するファーストライン治療としてのマルチキナーゼ阻害薬であるカボメティクス(一般名:カボザンチニブ、以下カボメティクス)+抗PD-L1抗体薬であるテセントリク(一般名:アテゾリズマブ、以下テセントリク)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のCOSMIC-312試験(NCT03755791)の結果がComprehensive Cancer CenterのR.K. Kelley氏らにより公表された。
COSMIC-312試験は、進行性肝細胞がん患者(N=837人)に対するファーストライン治療として1日1回カボメティクス40mg+3週を1サイクルとしてテセントリク1200mg併用療法を実施する群(N=432人)、1日2回ソラフェニブ400mg単剤を投与する群(N=217人)、もしくは1日1回カボメティクス60mg単剤療法を投与する群(N=188人)に2対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてソラフェニブ単剤群に対するカボメティクス+テセントリク併用群の無増悪生存期間(PFS)の優越性、ソラフェニブ単剤群に対するカボメティクス+テセントリク併用群の全生存期間(OS)の優越性を比較検証した国際多施設共同オープンラベル第3相試験である。
本試験に登録された837人の患者背景は下記の通りである。B型肝炎ウイルス(HBV)患者割合30%、C型肝炎ウイルス(HCV)31%。人種はアジア人29%。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、カボメティクス+テセントリク併用群の6.8ヶ月に対してソラフェニブ単剤群で4.2ヶ月と、カボメティクス+テセントリク併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを37%統計学的有意に減少(HR:0.63、99%信頼区間:0.44–0.91、P=0.0012)を示した。
もう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)は、統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.90、96%信頼区間:0.69–1.18、P=0.438)。
一方の安全性として、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は、カボメティクス+テセントリク併用群の54%に対してソラフェニブ単剤群で32%であった。最も多くの患者で確認されたグレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。手足症候群はカボメティクス+テセントリク併用群の7.9%に対してソラフェニブ単剤群で8.2%、高血圧は7.0%に対して6.3%、AST増加は6.5%に対して2.4%、ALT増加は6.3%対して1.9%だった。グレード5の治療関連有害事象(TRAE)発症率は、カボメティクス+テセントリク併用群の1.9%に対してソラフェニブ単剤群で0.5%であった。
以上のCOSMIC-312試験の結果よりR.K. Kelley氏らは「進行性肝細胞がん患者に対するファーストライン治療としてのマルチキナーゼ阻害薬カボメティクス+抗PD-L1抗体薬テセントリク併用療法は、ソラフェニブ単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。また、安全性プロファイルも良好であり、既存の臨床試験で確認されている内容と一致しておりました」と結論を述べている。