・前治療歴のあるHER2陽性の再発転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・エンハーツ単剤療法とT-DM1単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・12ヶ月無増悪生存率はエンハーツ群で75.8%、T-DM1群で34.1%であり、
エンハーツ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを72%減少した
2022年3月24日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて前治療歴のあるHER2陽性の再発転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、DS-8201、以下エンハーツ)、抗HER2抗体チューブリン重合阻害薬複合体であるT-DM1(一般名:トラスツズマブ エムタンシン、以下T-DM1)の有効性、安全性を比較検証した第3相のDESTINY-Breast03試験(NCT03529110)の結果がthe Universidad Autónoma de MadridのJavier Cortes氏らにより公表された。
DESTINY-Breast03試験は、前治療歴のあるHER2陽性の再発転移性乳がん患者(N=524人)に対してエンハーツを投与する群、もしくはT-DM1を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央評価(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した国際多施設共同の第3相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である12ヶ月無増悪生存率(PFS)はエンハーツ群の75.8%(95%信頼区間:69.8-80.7%)に対してT-DM1群で34.1%(95%信頼区間;27.7-40.5%)と、T-DM1に比べてエンハーツ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを72%減少(HR:0.28、95%信頼区間:0.22-0.37、P<0.001)した。
副次評価項目である12ヶ月全生存率(OS)はエンハーツ群の94.1%(95%信頼区間:90.3-96.4%)に対してT-DM1群で85.9%(95%信頼区間:80.9-89.7%)と、T-DM1に比べてエンハーツ群で死亡(OS)のリスクを45%減少(HR:0.55、95%信頼区間:0.36-0.86)した。
客観的奏効率(ORR)はエンハーツ群の79.7%(95%信頼区間:74.3-84.4%)に対してT-DM1群で34.2%(95%信頼区間:28.5-40.3%)を示した。一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はエンハーツ群の98.1%に対してT-DM1群で86.6%を示し、グレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はエンハーツ群の45.1%に対してT-DM1群で39.8%であった。また、薬物関連間質性肺疾患または非感染性肺炎の発症率はエンハーツ群の10.5%に対してT-DM1群で1.9%であった。
以上のDESTINY-Breast03試験の結果よりJavier Cortes氏らは「前治療歴のあるHER2陽性の再発転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ療法は、抗HER2抗体チューブリン重合阻害薬複合体T-DM1療法に比べて病勢進行または死亡(PFS)のリスクを低減させました」と結論を述べている。