・エストロゲン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者が対象の第3相試験
・Elacestrant(エラセストラント)単剤療法の有効性・安全性を標準ホルモン療法と比較検証
・無増悪生存期間は全患者群、ESR1遺伝子変異群 において病勢進行または死亡のリスクを減少した
5月18日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者に対する経口選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)であるElacestrant(エラセストラント)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のEMERALD試験の結果がInstitut CurieのFrancois-Clement Bidard氏らにより公表された。
EMERALD試験は、治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者(N=477人)に対して1日1回Elacestrant400mg単剤療法を実施する群(N=239人)、標準ホルモン療法を実施する群(N=238人)に無作為に振り分け、主要評価項目として全患者群における無増悪生存期間(PFS)、重要な副次評価として全生存期間(OS)、その他評価項目として客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した第3相試験である。
本試験が開始された背景として、治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がんは予後不良である。早期臨床試験にて、経口選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)であるElacestrantは臨床効果を示しており、第3相試験での有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である全患者群における無増悪生存期間(PFS)は、標準ホルモン療法に比べてElacestrant単剤療法で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを30%減少(HR:0.70、95%信頼区間:0.55-0.88、P=0.002)した。
また、ESR1遺伝子変異群における無増悪生存期間(PFS)は、標準ホルモン療法に比べてElacestrant単剤療法で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを45%減少(HR:0.55、95%信頼区間:0.39-0.77、P=0.0005)した。
一方の安全性として、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は、Elacestrant単剤療法群の7.2%に対して標準ホルモン療法群で3.1%を示した。また、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はElacestrant単剤療法群の3.4%に対して標準ホルモン療法群で0.9%であった。
以上のEMERALD試験の結果よりFrancois-Clement Bidard氏らは「治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者に対する経口選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)Elacestrant単剤療法は、標準ホルモン療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を全患者群、ESR1遺伝子変異群において改善しました。また、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。