・治療歴のあるHER3陽性転移性乳がん患者が対象の第1/2相試験
・パトリツマブ デルクステカン単剤療法の有効性・安全性を検証
・客観的奏効率は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性/HER3高発現+低発現30.1%、
トリプルネガティブ/HER3高発現22.6%、HER2陽性/HER3高発現42.9%を示した
6月3日~7日、米国・イリノイ州シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2022)にて治療歴のあるHER3陽性転移性乳がん患者に対するHER3に対する抗体薬物複合体(ADC)であるパトリツマブ デルクステカン(U3-1402/HER3-DXd)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1/2相のU31402-A-J101試験(U31402-A-J101; NCT02980341; JapicCTI-163401)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのIan E. Krop氏らにより公表された。
U31402-A-J101試験は、HER3陽性転移性乳がん患者(N=182人)に対し、用量漸増パート(N=66人)では3週を1サイクルとしてパトリツマブ デルクステカン単剤療法を実施し、安全性、忍容性、最大耐用量(MTD)を検証。その後サブタイプ別に分け、3週を1サイクルとしてパトリツマブ デルクステカン単剤療法の用量拡大を実施し、第2相試験推奨用量を検証した多施設共同非盲検の第1/2相試験である。パトリツマブ デルクステカンの投与量は、HER3高発現群に対して4.8mg/kg(N=66人)もしくは6.4mg/kg(N=31人)、HER3低発現群(N=21人)に対して6.4mg/kg、ホルモン受容体陽性/HER2陰性またはトリプルネガティブ/HER3高発現群(N=31人)に対して6.4mg/kgであった。
本試験に登録された患者の年齢中央値は57歳(30~83歳)。ECOG Performance Statusはスコア0が72.5%(N=132人)、スコア1が27.5%(N=50人)。前治療歴中央値は5レジメン(1~13レジメン)。以上の背景を有する患者における結果は下記の通りである。本試験の追跡期間中央値31.9ヶ月における結果は下記の通りである。客観的奏効率(ORR)は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性/HER3高発現+低発現群(N=113人)で30.1%(95%信頼区間:21.8-39.4%)、トリプルネガティブ/HER3高発現群(N=53人)で22.6%(95%信頼区間:12.3-36.2%)、HER2陽性/HER3高発現群(N=14人)で42.9%(95%信頼区間17.7-71.1%)を示した。
奏効持続期間(DOR)中央値は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性/HER3高発現+低発現群で7.2ヶ月(95%信頼区間:5.3ヶ月-未到達)、トリプルネガティブ/HER3高発現群で5.9ヶ月(95%信頼区間:3.0-8.4ヶ月)、HER2陽性/HER3高発現群で8.3ヶ月(95%信頼区間:2.8-26.4ヶ月)を示した。
一方、安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率は71.4%(N=130人)を示し、15%以上の患者で確認された有害事象(AE)は好中球数減少が39.6%、血小板数減少が30.8%、貧血が18.7%、白血球数減少が18.1%だった。また、治療関連の間質性肺疾患は6.6%(N=12人)の患者で確認され、そのうちグレード5は1例であった。
以上のU31402-A-J101試験の結果よりIan E. Krop氏らは「治療歴のあるHER3陽性転移性乳がん患者に対するHER3に対する抗体薬物複合体(ADC)であるパトリツマブ デルクステカン(U3-1402/HER3-DXd)単剤療法は、トリプルネガティブ乳がんだけでなく、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がん、HER2陽性乳がんに対しても抗腫瘍効果を示し、忍容性も良好でした」と結論を述べている。