・転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・経口パクリタキセル+Encequidar併用療法の有効性・安全性を静注パクリタキセル単剤と比較検証
・経口パクリタキセル+Encequidar群において、確定奏効率、無増悪生存期間、全生存期間の改善を示した
7月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて転移性乳がん患者に対する経口パクリタキセル+P糖タンパク阻害薬Encequidar(エンセキダル)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT02594371)の結果がUniversity of California San FranciscoのHope S. Rugo氏らにより公表された。
本試験は、転移性乳がん患者(N=402人)に対して1週を1サイクルとして経口パクリタキセル205mg/m2+Encequidar15mg併用療法を3日間連日実施する群(N=265人)、もしくは3週を1サイクルとして静注パクリタキセル175mg/m2単剤療法を実施する群(N=137人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央評価(BICR)判定による放射線画像検査により確認された奏効率(確定奏効率)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証したオープンラベルの第3相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である確定奏効率は経口パクリタキセル+Encequidar併用群の36%に対して静注パクリタキセル単剤群で23%を示した(P=0.01)。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は経口パクリタキセル+Encequidar併用群の8.4ヶ月に対して静注パクリタキセル単剤群で7.4ヶ月と、経口パクリタキセル+Encequidar併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを23.2%(HR:0.768、95.5%信頼区間:0.584-1.01、P=0.046)減少した。
全生存期間(OS)中央値は経口パクリタキセル+Encequidar併用群の22.7ヶ月に対して静注パクリタキセル単剤群で16.5ヶ月と、経口パクリタキセル+Encequidar併用群で死亡(OS)のリスクを20.6%(HR:0.794、95.5%信頼区間:0.607-1.037、P=0.08)減少した。
一方の安全性として、グレード3~4の有害事象(AE)発症率は経口パクリタキセル+Encequidar併用群の55%に対して静注パクリタキセル単剤群で53%であった。なお、グレード2以上の重篤な神経障害発症率は経口パクリタキセル+Encequidar併用群の2%に対して静注パクリタキセル単剤群で15%、全グレードの脱毛症は49%に対して62%と経口パクリタキセル+Encequidarで低率であったが、吐き気、嘔吐、下痢、ベースラインの肝機能が高値の患者における好中球減少症は経口パクリタキセル+Encequidarで高率であった。
以上の第3相試験の結果よりHope S. Rugo氏らは「転移性乳がん患者に対する経口パクリタキセル+P糖タンパク阻害薬Encequidar併用療法は、静注パクリタキセル単剤療法に比べて確定奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を改善しました。また、神経障害、特に重篤な神経障害の発症率は経口パクリタキセル+P糖タンパク阻害薬Encequidar併用群で低率でした」と結論を述べている。