がん情報サイト「オンコロ」

多発性骨髄腫の新薬ニンラーロ(イキサゾミブ)が期待されている患者さんは自家造血幹細胞移植後のメンテンス療法

再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者さんの新薬として2017年3月末日に承認が下りましたニンラーロ(イキサゾミブ)ですが、期待されている治療場面はどこでしょうか?

カイプロリス(カルフィルゾミブ)、エンプリシティ(エロツズマブ)など他の新薬にないニンラーロ(イキサゾミブ)最大の特徴は経口薬であること、つまり服薬コンプライアンスの高さにあります。

多発性骨髄腫のように治療目的が治癒でなく延命である病気は、長期間その病気と付き合う覚悟が必要です。しかし、治療開始時に固めた覚悟が揺らぐ場面があります。それは副作用が発症した時と、病院に通うのが面倒になった時です。

前者は闘病のために致し方ないことですが、後者は薬の投与経路を注射から内服薬に切り替えることで解消できます。これが、ニンラーロ(イキサゾミブ)が服薬コンプライアンスが高いと言われる所以です。

では、この服薬コンプライアンスが多発性骨髄腫の治療で最も活きる場面はどこでしょうか?それは、導入時でもなく、再発時でもなく、メンテンス時です。

多発性骨髄腫のメンテンス治療とは、治療による奏効率が完全奏功(CR)、非常に良い部分奏効(VGPR)、部分奏効(PR)の状態を維持している時に実施する治療方法です。

現在、このメンテンス治療では主にRd療法(レナリドミド+デキサメタゾン)が実施されています。なぜなら、内服薬で治療を実施できるからです。もちろん、V療法(ボルテゾミブ)でもメンテンス療法は実施可能ですが、メンテンス期間は2年前後と長期間に渡りますので、この期間V療法(ボルテゾミブ)を受けるために毎週通院するのは患者も医師も負担になります。

そのために、治療の有効性以外の服薬コンプライアンスが考慮され、Rd療法(レナリドミド+デキサメタゾン)がメンテンス療法として主流になっています。

しかし、もしもメンテンス療法に服薬コンプライアンスが保たれているならば、ベルケイド(ボルテゾミブ)をはじめプロテアソーム阻害薬(PI)でメンテンス療法を実施した方が効果の高い患者さんもいる可能性はおおいにいらっしゃるでしょう。

このような期待から、経口プロテアソーム阻害薬(PI)であるニンラーロ(イキサゾミブ)では、下記のような第三相治験が実施されています。

A Study of Oral Ixazomib Citrate (MLN9708) Maintenance Therapy in Participants With Multiple Myeloma Following Autologous Stem Cell Transplant

上記治験では、自家造血幹細胞移植により奏効率が完全奏功(CR)、非常に良い部分奏効(VGPR)、部分奏効(PR)を達成した患者さんに対して、メンテンス療法としてニンラーロ(イキサゾミブ)3mgを投与する郡、プラセボを投与する郡にわけて、その無憎悪生存率(PFS)を検証した治験です。

無憎悪生存率(PFS)の観察期間は2年間で、先んじてメンテンス療法のポジションを確立したレブラミド(レナリドミド)と同様の試験デザインになっております。患者登録の完了は2018年3月を予定しておりましたが、この治験は既に前倒しで患者登録が終了しておりますので、治験の中間解析結果の速報が待たれます。

目次

ニンラーロ(イキサゾミブ)の薬剤概要(海外)

製品名

ニンラーロ

一般名

イキサゾミブ

用法用量

週1回の経口投与

効果効能

再発又は難治性の多発性骨髄腫

主な副作用

下痢、便秘、血小板減少症末梢神経障害悪心、末梢性浮腫、嘔吐、背部痛

製造承認日

2017年3月30日(日本)

ニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序

蛋白分解酵素を持つサブユニットの中でもキモトリプシン様活性を持つβ5サブユニット、カスパーゼ様活性のβ1サブユニットに可逆的に結合することでキモトリプシン様活性を強力に阻害して、カスパーゼ様活性を阻害する

ニンラーロ(イキサゾミブ)の最新文献

・2016年9月20日
Randomized phase 2 trial of ixazomib and dexamethasone in relapsed multiple myeloma not refractory to bortezomib | Blood Journal
・2016年5月16日
A pharmacokinetics and safety phase 1/1b study of oral ixazomib in patients with multiple myeloma and severe renal impairment or end‐stage renal disease requiring haemodialysis
・2016年4月28日
Oral Ixazomib, Lenalidomide, and Dexamethasone for Multiple Myeloma — NEJM
・2015年8月14日
Blood Cancer Journal – Phase 2 trial of ixazomib in patients with relapsed multiple myeloma not refractory to bortezomib

ニンラーロ(イキサゾミブ)の口コミ

医師のコメント

その他医療関係者のコメント

×
モバイルバージョンを終了