・治療歴のある閉経前のホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者が対象の第2相試験
・CDK4/6阻害薬イブランス+ホルモン療法の有効性・安全性を比較検証
・イブランス+ホルモン療法で病勢進行または死亡のリスクを34.1%統計学的有意に改善
2019年10月24日、医学誌『The Lancet Oncology』にて治療歴のある閉経前のホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対するCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブ(商品名イブランス;以下イブランス)+ホルモン療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT02592746)の結果がSungkyunkwan University School of MedicineのYeon Hee Park氏らにより公表された。
本試験は、タモキシフェン治療後に病勢進行した閉経前のホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者(N=184人)に対して28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回イブランス125mg+1日1回エキセメスタン25mg+1日目にリュープロレリン3.75mg併用療法を投与する群(N=92人)、または3週を1サイクルとして1~14日目に1日2回カペシタビン1250mg/m2を投与する群(N=92人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した多施設共同オープンラベルランダム化の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、閉経後乳がん患者に限らず閉経前乳がん患者に対してもホルモン療法は治療ガイドラインにおいて標準治療として推奨されている。しかしながら、以前として閉経前のホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対して化学療法が臨床では使用されている。以上の背景より、化学療法に比べてホルモン療法ベースの治療の有用性を証明する目的で本試験が開始された。
本試験の追跡期間中央値17ヶ月(9-22ヶ月)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はイブランス+エキセメスタン+リュープロレリン併用群20.1ヶ月(95%信頼区間:14.2-21.8ヶ月)に対してカペシタビン群14.4ヶ月(95%信頼区間:12.1-17.0ヶ月)、イブランス+エキセメスタン+リュープロレリン併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを34.1%(HR:0.659,95%信頼区間:0.437-0.994,P=0.0235)統計学的有意に改善した。
一方の安全性として、カペシタビン群よりもイブランス+エキセメスタン+リュープロレリン併用群で多くの患者で報告されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症(75%対16%)であった。また、重篤な有害事象(SAE)発症率はイブランス+エキセメスタン+リュープロレリン併用群2%に対してカペシタビン群17%であった。
以上の第2相試験の結果よりYeon Hee Park氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある閉経前のホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対するCDK4/6阻害薬イブランス+ホルモン療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。”