・移植適応のある新規多発性骨髄腫患者が対象の第2相試験
・導入療法、ASCT後のコンソリデーション療法、維持療法としてのエムプリシティ+レブラミド+デキサメタゾン併用療法の有効性・安全性を検証
・治療継続率は良好であり、客観的奏効率も非常に良好だった一方、ハイリスク患者群の無増悪生存期間、全生存期間は標準リスク患者群に比べて劣っていた
2019年12月7日より10日まで米国フロリダ州オーランドで開催された第61回米国血液学会(ASH2019)にて、移植適応のある新規多発性骨髄腫患者に対する導入療法、自家造血幹細胞移植(ASCT)後のコンソリデーション療法、維持療法としての抗ヒトSLAMF7モノクローナル抗体であるエロツズマブ(商品名エムプリシティ;以下エムプリシティ)+レナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を検証した第2相試験の結果がSarah Cannon Research InstituteのJesus G. Berdeja氏らにより公表された。
本試験は、移植適応のある新規多発性骨髄腫患者(N=52人)に対して28日を1サイクルとして1, 8, 15, 22日目(3、4サイクル目は1,15日目)エムプリシティ10mg/kg+1~21日目にレブラミド25mg+デキサメタゾン併用療法を4サイクル投与後、自家造血幹細胞移植(ASCT)を実施後の70~120日にコンソリデーション療法として28日を1サイクルとして1,15日目にエムプリシティ10mg/kg+1~21日目にレブラミド15mg+デキサメタゾン併用療法を4サイクル投与後、維持療法として28日を1サイクルとして1日目にエムプリシティ20mg/kg+1~21日目にレブラミド10mg+デキサメタゾン併用療法を最大24ヶ月投与し、主要評価項目として導入療法における完遂率として定義されたfeasibility、副次評価項目として完全奏効率(CR)、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は61歳。性別は男性56%。R-ISSによる進行病期はステージIIIが12%。染色体異常(17p del, t(4;14), t(14;16)の全てまたはいずれか)を有する患者21%。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目であるfeasibility率は56%を示した。また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は92%。フォローアップ期間中央値20ヶ月時点における副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)中央値は未到達、18ヶ月無増悪生存率(PFS)、18ヶ月全生存率(OS)はそれぞれ83%、89%を示した。
また、R-ISS分類によるステージIIIまたは染色体異常を有する患者をハイリスク、R-ISS分類によるステージIまたは染色体異常のない患者を標準リスクとして定義し、各群における結果は下記の通りである。主要評価項目であるfeasibility率はハイリスク群57%に対して標準リスク群64%を示した。副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はハイリスク群87%に標準リスク群93%。無増悪生存期間(PFS)中央値はハイリスク群20.5ヶ月に標準リスク群未到達。全生存期間(OS)中央値はハイリスク群22.0ヶ月に標準リスク群未到達。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は疲労59.6%、下痢42.3%、吐き気42.3%。なお、末梢神経障害は29%の患者で確認されたが、その大半はグレード2以下であった。また、重篤な有害事象(SAE)発症率は28%(N=20人)の患者で確認され、1人の患者が治療関連の心不全のために死亡が確認された。
以上の第2相試験の結果よりJesus G. Berdeja氏らは以下のように結論を述べている”移植適応のある新規多発性骨髄腫患者に対する導入療法、自家造血幹細胞移植(ASCT)後のコンソリデーション療法、維持療法としてのエムプリシティ+レブラミド+デキサメタゾン併用療法は治療継続率が良好であり、客観的奏効率(ORR)も非常に良好でした。なお、高い客観的奏効率(ORR)にも関わらず、ハイリスク患者群における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)は標準リスク患者群に比べて劣っておりました。”