・転移性胆道がんを対象とした第2相試験
・ファーストライン治療としてサイラムザまたはMerestinib+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間、全生存期間、客観的奏効率は改善せず
2020年1月23日(木)~25日(土)に米国・サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(2020 Gastrointestinal Cancers Symposium)にて、転移性胆道がん患者に対するファーストライン治療としての抗VEGFR2抗体ラムシルマブ(商品名サイラムザ;以下サイラムザ)またはc-Met阻害薬であるMerestinib+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT02711553)の結果がThe University of ManchesterのJuan W. Valle氏らにより公表された。
本試験は、転移性胆道がん患者(N=309人)に対して3週を1サイクルとしてサイラムザ8mg/kg+ゲムシタビン1000mg/m2+シスプラチン25mg/m2併用療法を投与する群(N=106人)、または1日1回Merestinib 80mg+ゲムシタビン1000mg/m2+シスプラチン25mg/m2併用療法を投与する群(N=102人)、または1日1回プラセボ+ゲムシタビン1000mg/m2+シスプラチン25mg/m2併用療法を投与する群(N=101人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した第2相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はサイラムザ群6.47ヶ月(80%信頼区間:5.65 – 7.13ヶ月)に対してMerestinib群6.97ヶ月(80%信頼区間:6.21 – 7.13ヶ月)に対して6.64ヶ月(80%信頼区間:5.59 – 6.83ヶ月)を示した。なお、プラセボ群に対する病勢進行または死亡(PFS)のリスクはサイラムザ群で12.3%増加(HR:1.123,80%信頼区間:0.904–1.395)、Merestinib群で8%減少(HR:0.920,80%信頼区間:0.734 – 1.153)した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はサイラムザ群10.45ヶ月(95%信頼区間:8.48 – 11.76ヶ月)に対してMerestinib群14.03ヶ月(95%信頼区間:11.96 – 16.36ヶ月)に対して13.04ヶ月(95%信頼区間:11.40 – 15.31ヶ月)を示した。なお、プラセボ群に対する死亡(OS)のリスクはサイラムザ群で33.6%増加(HR:1.336,80%信頼区間:0.959 – 1.862)、Merestinib群で5.2%減少(HR:0.948,80%信頼区間:0.669 – 1.342)した。
客観的奏効率(ORR)はサイラムザ群31.1%(95%信頼区間:22.3 – 39.9%)に対してMerestinib群19.6%(95%信頼区間:11.9 – 27.3%)に対して32.7%(95%信頼区間:23.5 – 41.8%)を示した。なお、プラセボ群に対する客観的奏効率(ORR)のオッズ比はサイラムザ群で1.0 (95%信頼区間:0.6 – 1.9)、Merestinib群で0.5(95%信頼区間:0.2 – 0.9)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。好中球減少症はサイラムザ群49.0%に対してMerestinib群47.1%に対してプラセボ群33.0%、血小板減少症はサイラムザ群34.6%に対してMerestinib群18.6%に対してプラセボ群17.0%、貧血はサイラムザ群26.9%に対してプラセボ群19.0%、ALT増加はMerestinib群10.8%に対してプラセボ群5.0%を示した。
以上の第2相試験の結果よりJuan W. Valle氏らは以下のように結論を述べている。”転移性胆道がん患者に対するファーストライン治療としてゲムシタビン+シスプラチン併用療法に抗VEGFR2抗体サイラムザまたはc-Met阻害薬Merestinibを上乗せしても、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)は改善しませんでした。”