・KRAS野生型の切除可能肝転移を有する大腸がん患者を対象とした第3相試験
・化学療法+抗EGFR抗体アービタックス併用療法の有効性・安全性を比較検証
・アービタックスの上乗せは、全生存期間を悪化させる可能性が示唆された
2020年1月31日、医学誌『The Lancet Oncology』にてKRAS野生型の切除可能な肝転移を有する大腸がん患者に対する化学療法+抗EGFR抗体であるセツキシマブ(商品名アービタックス;以下アービタックス)併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のNew EPOC試験の結果がUCL Cancer Institute, University College LondonのJohn A Bridgewater氏らにより公表された。
本試験は、18歳以上のKRAS野生型の切除可能な肝転移を有する大腸がん患者に対して化学療法+アービタックス併用療法を投与する群(N=129人)、または化学療法を投与する群(N=128人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同ランダム化の第3相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値66.7ヶ月時点における結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は下記の通りである。アービタックス併用群15.5ヶ月(95%信頼区間:13.8‐19.0ヶ月)に対して化学療法群22.2ヶ月(95%信頼区間:18.3‐26.8ヶ月)、アービタックス併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを17%増加(HR:1.17,95%信頼区間:0.87‐1.56,P=0.304)した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はアービタックス併用群55.4ヶ月(95%信頼区間:43.5‐71.5ヶ月)に対して化学療法群81.0ヶ月(95%信頼区間:59.6ヶ月‐未到達)、アービタックス併用群で死亡(OS)のリスクを45%増加(HR:1.45,95%信頼区間:1.02‐2.05,P=0.036)した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は下記の通りである。好中球数減少がアービタックス併用群15%に対して化学療法群19%、下痢がアービタックス併用群10%に対して化学療法群10%、皮膚障害がアービタックス併用群16%に対して化学療法群1%、血栓塞栓イベントがアービタックス併用群8%に対して化学療法群7%、嗜眠がアービタックス併用群7%に対して化学療法群7%、口腔粘膜炎がアービタックス併用群10%に対して化学療法群2%を示した。
以上のNew EPOC試験の結果よりJohn A Bridgewater氏らは以下のように結論を述べている。”KRAS野生型の切除不能大腸がん患者に対する化学療法+抗EGFR抗体アービタックス併用療法は、全生存期間(OS)を統計学有意に改善することが複数の臨床試験にて示されています。しかしながら、切除可能な大腸がん患者に対する化学療法へのアービタックス上乗せは、全生存期間(OS)を悪化させる可能性が本試験にて示唆されました。”