・初発中枢神経系原発悪性リンパ腫患者が対象の第3相試験
・高用量メトトレキサート+全脳照射+テモゾロミド併用療法後にアジュバント療法としてテモゾロミド単剤療法の有効性・安全性を検証
・テモゾロミド群で優越性を示す確率が1.3%程度のため、試験を早期中止
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて初発中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対する高用量メトトレキサート+全脳照射(WBRT)+経口アルキル化剤であるテモゾロミド併用療法、アジュバント療法としてのテモゾロミド単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のJCOG1114C試験の結果が埼玉医科大学の三島一彦氏らにより公表された。
JCOG1114C試験とは、初発中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対して高用量メトトレキサート+全脳照射を実施する群(アームA)、または高用量メトトレキサート+全脳照射(WBRT)+テモゾロミド併用療法、その後アジュバント療法としてのテモゾロミド単剤療法を実施する群(アームB)に無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、無増悪性生存期間(PFS)、安全性などを比較検証した第3相試験である。
初発中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対する高用量メトトレキサートは生存期間を延長するが、高頻度の確率で再発する。また、高用量メトトレキサートに全脳照射(WBRT)を追加することで無増悪性生存期間(PFS)を改善するが全生存期間(OS)を改善する効果は明らかではない。以上の背景より、血液脳関門を透過する経口アルキル化剤であるテモゾロミドを追加することで全生存期間(OS)が改善するかどうかを検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者の年齢中央値はアームAで63歳(35~70歳)に対してアームBで62歳(34~70歳)。性別はアームAで男性65%に対してアームBで女性58%。初回登録時の病変はアームAで単一病変44%、眼の病変11%に対してアームAで単一病変50%、眼の病変12%。
本試験の主要評価項目である2年全生存率(OS)の結果はアームAで86.8%(95%信頼区間:72.5%~94.0%)に対してアームBで71.4%(95%信頼区間:56.0%~82.2%)、アームBで死亡(OS)のリスクを118%(HR:2.18,95%信頼区間:0.95~4.98,P=0.97)増加し、テモゾロミド群で優越性を示す確率が1.3%程度のため試験の早期中止が決定された。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はアームAで92%(95%信頼区間:80.8%~97.8%)に対してアームBで91.7%(95%信頼区間:80.0%~97.7%)を示した。また、完全奏効率(CR)はアームAで56.0%(95%信頼区間:41.3%~70.0%)に対してアームBで45.8%(95%信頼区間:31.4%~60.8%)を示した。
2年無増悪生存率(PFS)はアームAで60.6%(95%信頼区間:43.6%~73.8%)に対してアームBで49.9%(95%信頼区間:34.4%~63.5%)、アームBで病勢進行または死亡(PFS)のリスクを54%(HR:1.54,95%信頼区間:0.88~2.70)増加した。
安全性として、アームBで最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)はリンパ球減少症がアームAで11.5%に対してアームBで30%(WBRT+TMZ同時投与中)、37.5%(テモゾロミドアジュバント療法中)、倦怠感が10.4%(テモゾロミドアジュバント療法中)。
以上のJCOG1114C試験の結果より三島一彦氏らは「初発中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対する高用量メトトレキサート+全脳照射(WBRT)にテモゾロミドを上乗せしても全生存期間(OS)の向上効果を示すことはできませんでした」と結論を述べている。