全世界で抗がん剤によるコストは最近の20年で急速に増加している。日本でも、抗ウイルス薬レジパスビル/ソホスブビル(ハーボニー)や免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(オプジーボ)といった薬剤の規定外の薬価に対して賛否両論の議論が展開されているのは記憶に新しい。
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新たな抗がん剤は高い値段に相応しい価値があるのか?
米国国立がん研究所(NCI)の癌登録データベースSEER (Surveillance Epidemiology and End Results Program)プログラムに登録されたMedicareの利用患者を対象に、日常診療における新規抗がん剤の価値を評価した。対象となるがんは、転移性乳がん、肺がん、腎臓がん、骨髄性白血病で、それぞれ1996~2000年および2007~11年の2つの期間での患者の平均生存期間(余命)と生涯医療費(がんと診断されてから死亡までの薬剤費、外来医療費、入院医療費)を分析した結果が、9月1日、Health Affairs誌に掲載された。
結果、患者は4がん種で73,024名、1996~2000年の分析患者数は25,174名、2007~11年は47,850名。中でも、肺がんが62,865名と最も多かった。
1996~2000年と2007~11年で比較をみると、平均して平均余命は13カ月延長し、生涯コストは72,000ドル(727万円;1ドル101円)増加している。
各平均余命の生存と、生涯医療コストの増量は以下の通りであった。
・転移性乳がん:平均余命は13.2ヶ月延長し、生涯医療コストは72,200ドル(約729万円)増加
・肺がん:平均余命が3.9ヶ月延長し、生涯医療コストは23,200ドル(約234万円)増加
・腎臓がん:平均余命が7.9ヶ月延長し、生涯医療コストは44,700ドル(約451万円)増加
・慢性骨髄性白血病:平均余命が22.1ヵ月延長し、生涯医療コストは142,200ドル(約1436万円)増加
転移性乳がん、肺がん、腎臓がん、慢性骨髄性白血病では、新たな抗がん剤による医療コストの増加は大きいが、それとともに大きな余命の延長が見られたが、これらの薬剤で治療しなかった患者ではコストの増加も余命の延長もわずかだった。とはいえ、転移性乳癌、肺癌、腎臓癌における余命の改善は依然として高いとはいえない。さらなる恩恵を得るため、将来の新薬の研究開発が必要となるであろう、と筆者は述べている。
上記から読み取れるもう一つの事実?~余命1か月の延長するのに59万円~
ここからは個人見解である。
上記の数字より、各がん種ごと1か月余命を延長するための費用は、乳がん5450ドル、肺がん5949ドル、腎臓がん5658ドル、慢性骨髄性白血病6436ドルとも読み取れる。これらの平均値は5873ドル(約59万円)。この数字が医学の発展と共に支払われるようになった数字ともいえるかもしれない。
米国の場合は個人負担である。
日本のケースに当てはめるのは全くもってナンセンスではあるかもしれないが、これと同じようなケースにおいて唯一違うのは、日本の場合は国民全員でこれを支払っているという事実である。
記事:可知 健太 & 加藤 テイジ