・治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者が対象の第1/2相試験
・カドサイラ+カペシタビン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・客観的奏効率カドサイラ単剤群36%に対してカペシタビン併用群44%
2020年6月25日、医学誌『JAMA Oncology』にて治療歴のあるHER2陽性の転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体であるトラスツズマブエムタンシン(商品名カドサイラ;以下カドサイラ)+カペシタビン併用療法の有効性、安全性を検証した第1/2相試験(NCT01702558)の結果がIOB Institute of OncologyのJavier Cortés氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のあるHER2陽性の転移性乳がん患者(N=161人)に対して、それぞれ3週を1サイクルとしてカドサイラ3.6mg/kg単剤療法を投与する群とカドサイラ3.6mg/kgと1~14日目に1日2回カペシタビン(650mg/m2,700mg/m2,750mg/m2)併用投与する群に振り分け、主要評価項目として第1相試験では最大耐用量(MTD)、第2相試験では客観的奏効率(ORR)を検証した試験である。
治療歴のあるHER2陽性の転移性乳がん患者に対する現在の標準治療は抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体カドサイラである。しかし、本患者は予後不良であり、新しい治療選択肢の開発が必要である。以上より、治療歴のあるHER2陽性の転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体カドサイラ+カペシタビン併用療法の有用性を検証する目的で開始された。
第2相段階の主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はカドサイラ+カペシタビン併用群44%(N=36/81人)に対してカドサイラ単剤群36%(N=29/80人)、カドサイラ+カペシタビン併用群で差8.2%(90%信頼区間:-4.5%~20.9%,P=0.34)であった。
安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はカドサイラ+カペシタビン併用群95%に対してカドサイラ単剤群88%、グレード3~4の有害事象(AE)発症率はカドサイラ+カペシタビン併用群44%に対してカドサイラ単剤群41%を示した。なお、グレード5の有害事象(AE)は両群間で確認されていない。
以上の第1/2相試験の結果よりJavier Cortés氏らは「治療歴のあるHER2陽性の転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体カドサイラ+カペシタビン併用療法は、カドサイラ単剤群に比べて客観的奏効率(ORR)を統計学的有意に改善しませんでした」と結論を述べている。